研究課題/領域番号 |
26870795
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研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
石井 佳世 志學館大学, 人間関係学部, 准教授 (00551128)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドメスティック・バイオレンス / 現実構成 / デートDV / 質的研究 |
研究実績の概要 |
「ドメスティック・バイオレンス(以下DV)」という概念が社会に浸透したことによってDV被害者自身の認識が深まった一方、「DV」という言語を使用することで問題を再生産することにつながりかねないというパラドクスが生じることとなった。本研究ではDV支援に際しての「DV」概念の使用について意義と留意点を明らかにし、DVからの自己回復や援助者による効果的な支援のための方策を提案することを目的としている。 2014年度はDV支援に関する予備的な調査として、高校生、大学生などの交際しているカップル間で生じるDV的状況である「デートDV」の質問紙調査を行った。大学生及び専門学生250名を対象とし、デートDV加害及び被害の傾向とコントロール感等の関連を検討した。その結果被害傾向・加害傾向が高い群は、完全主義など自己への要求水準が有意に高く、従来加害者は被害者へのコントロール欲求が強い傾向があると指摘されてきたが、そのコントロール欲求は自身にも向くことが推察された。この結果は、被害者・加害者双方のコントロール感に焦点を当てた対話による支援の可能性を示唆するものと考えられる。 また、DV援助者3名を対象としたインタビュー調査を行った。援助者がクライエントの直面している問題をDV被害と見立てた際、「DV」という概念をどのくらい意識して用いているのかについて明らかにすることが目的である。具体的には①「DV」という概念をどのように理解しているか②「DV」という概念をDV被害者はどのように捉えていると感じているか③臨床場面において「DV」概念をどのくらい、どのように意識して用いているか④クライエントの直面している問題をDV被害と見立てた際、「DV」概念を用いる時と用いない時の違いは何を根拠としているか等の問いに基づき半構造化面接を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度に予定していたDVサバイバーに対するインタビューは終了し、分析にとりかかっているところである。また、2015年度に予定していたDV支援者に対するインタビューはすでに3名に実施しており、引き続き今年度も実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
DV援助者へのインタビュー調査を引き続き行う。また、インタビューの内容を逐語に基づき現象学的な分析を行う。 分析内容を論文にまとめ、学術誌に投稿し、また学術大会のシンポジウム等で発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はインタビュー調査を研究代表者の拠点である鹿児島市内で行うことが可能であったため、旅費の使用が少なかった。また、インタビューの逐語作成について、大学院生のアルバイトによって行う計画であったが、逐語起こしを請け負う会社に依頼した。
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次年度使用額の使用計画 |
インタビュー調査のための旅費および逐語作成費用に使用する。
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