研究課題/領域番号 |
26870796
|
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小宮 怜奈 沖縄科学技術大学院大学, サイエンス アンド テクノロジーグループ, サイエンス テクノロジー アソシエート (90631416)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生殖 / non-coding RNA / イネ |
研究実績の概要 |
現在までに、イネの非コードゲノム領域から、生殖初期に発現する771種の非コードRNA (non-coding RNA) を同定している。しかし、植物の非コードゲノム領域、及び、植物の初期生殖細胞発生に関する知見は乏しい。本研究では、減数分裂前の生殖初期に、特異的に発現する700種以上の生殖non-coding RNAを軸に、植物生殖細胞発生の分子メカニズム解明を目指す。 これらの生殖non-coding RNAは、21塩基長のsmall RNAに切断され、イネの生殖細胞特異的に働くArgonauteタンパク質と結合することが明らかとなった。これら生殖non-coding RNAを介したsmall RNAの生合成経路に関する論文 “Rice germline-specific Argonaute MEL1 protein binds to phasiRNAs generated from more than 700 lincRNAs”が、国際的に著名な植物の科学雑誌The Plant Journal に掲載された (Komiya et al., 2014)。 本年度、生殖non-coding RNAの詳細な機能を明らかにするため、生殖non-coding RNA内に、挿入変異体とRNAiによる抑制個体を作成し、発現解析、及び、稔性評価を行った。また、イネの葉組織と葯組織を用いたゲノムワイドなDNAメチル化解析を行い、エピジェネティック制御による生殖non-coding RNAの転写制御機構の解明を行った。生殖組織特異的にDNAメチル化が上昇する約1000カ所の領域と、約900箇所のDNAメチル化減少領域を同定した(未発表)。 さらに、逆遺伝学の手法により、生殖non-coding RNAの転写制御に関与する因子の同定を試みた。候補因子の変異体は、不稔を示し、種子が実らないことから、生殖制御細胞発生に関与する可能性が示唆された(未発表)。また、この候補因子の抗体を作成しその評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生殖non-coding RNAを介したsmall RNAの生合成経路に関する本成果を、科学雑誌The Plant Journalに報告し、その新規性と重要性が国内外で高く評価され、期待以上の研究の進展があったと考える。 また、1) イネの生殖non-coding RNA変異体を用いた機能解析 2) DNA メチル化解析 3) 生殖non-coding RNAの発現を制御する上流因子の探索に関する仕事を重点的に進め、計画通りに実施した。その結果、イネ生殖組織特異的に、DNAのメチル化が変化する領域を同定し、DNAメチル化を介した生殖non-coding RNAのエピジェネティック転写制御機構解明に努めた。また、上流因子の機能評価と抗体作成に取り組み、今後の展開が多いに期待できる。 生殖non-coding RNAの機能とその転写メカニズム解明にむけた “材料と基盤づくり”を初年度、精力的に行い、生殖non-coding RNAを軸に、総合的に研究を進めることができ、おおむね順調に研究が進んでいると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、1. イネ生殖non-coding RNAの機能 2. エピジェネティクと核内動態による生殖non-coding RNAの転写制御 3. 生殖non-coding RNAの転写を制御する上流因子による転写制御機構の解析を進め、最終的に、各データを統合し、生殖細胞発生メカニズムの立体的理解を深める。 生殖non-coding RNAが発現する非コード領域内のTOS17挿入変異体 (67系統)、及び、RNAi 個体 (4系統)において、生殖non-coding RNAの発現が抑制されなかったことから、ジーンターゲッティングを行い、生殖non-coding RNAの欠失個体を作成する。これらの変異体を用いて、生殖non-coding RNA間の相互作用、及び、初期生殖細胞の発生における機能を明らかにする。 エピジェネティックな転写制御機構の解明においては、700箇所を超える非コードゲノム領域とその周辺領域のDNAメチル化によるエピジェネティック解析を引き続き進める。また、生殖non-coding RNA 上流制御因子のクロマチン免疫沈降を行い、結合領域の同定を試みる。DNAメチル化解析と上流因子結合部位による二次元データと、生殖非コードゲノム領域の核内動態を併せ、植物生殖細胞でおこる空間制御を明らかにし、生殖non-coding RNAの転写制御、及び、生殖細胞発生のメカニズムを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
植物(イネ)を育成するための人工気象器の新型が発売され、申請時より、従来型のバイオトロンの価格が安くなった。そのため、従来型のバイオトロンを購入し、次年度 (平成27年度)に、139,881円を繰り越させていただきました。
|
次年度使用額の使用計画 |
抗体作成 (40万円)、クロマチン免疫沈降による溶出したDNAの次世代シーケンス解析 (60万円)、及び、DNA-FISHや免疫染色に使用する機器 (30万円) の購入を予定している。
|