研究課題/領域番号 |
26870797
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研究機関 | 仙台青葉学院短期大学 |
研究代表者 |
佐藤 利憲 仙台青葉学院短期大学, 看護学科, 講師 (10583031)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グリーフサポート / 遺児 / 死別体験 |
研究実績の概要 |
死別を体験した子ども(遺児)は、年齢や発達段階、生活環境、死別した方との関係などによって様々な反応を示すが、これらの反応が子どもの心身の成長発達に大きく影響し、成人期以降のうつ病の発症などのメンタルヘルスにも大きく関連すると言われている。しかし、わが国では遺児へのサポートはほとんど実施されておらず、コミュニティにおいては、遺児の理解が乏しく、周囲の不適切な対応(支援)により、傷つき体験を繰り返すことも多い。死別は誰もが体験するものである。死別によって生じる様々感情や反応は自然な感情であり、正常な反応である。このため、遺児支援は、日常生活の中で、コミュニティの中で十分にサポートされることが支援の要諦である。そこで本研究は、コミュニティにおける遺児の実態、および支援の課題を明らかにすると、また、実施している遺児支援プログラムや、スタッフ養成研修の有用性を検証し、調査結果をもとに、遺児にかかわる方々(保護者・教師・支援者・市民等)の遺児の理解の向上と支援技術の習得に向けた研修プログラムを開発することを目的とした。本年度は、支援者(保護者・教師・支援者・市民等)の遺児への支援課題を明確化するために、遺児に関する理解度、コミュニティにおける支援課題、スタッフ養成研修を受講した方々の遺児に関する理解度の変化を調査し、大学生、専門学校生、会社員、医療・専門職、教職員、行政職など約150名のデータが得られた。現在、分析段階であるが、属性によって遺児の理解度は異なり、コミュニティにおける調査では、特にネガティブなイメージに差が生じてることが示唆された。また、スタッフ養成研修前後での遺児に関する理解度の変化も確認された。今後、さらに調査を進めることにより、属性による遺児に関する理解度が明らかとなり、コミュニティにおける遺児への支援課題が明確化すると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は、遺児にかかわる方々(保護者・教師・支援者・市民等)の支援課題の明確化と、コミュニティにおける遺児の実態把握である。支援課題の明確化においては、当初の調査実施予定数を上回る様々な支援者に調査を実施することができた。遺児の実態把握に関しては、全国的な調査は実施できていないが、遺児支援プログラムを開催している研究協力者(団体)とともに、遺児とその家族の心理的・社会的・経済的な問題やニーズについての討議を定期的に開催している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は以下の通りである。 ①遺児支援プログラム、およびスタッフ養成研修の検証:遺児と保護者の調査と、ボランティアスタッフの調査を実施する。遺児・保護者の調査は、プログラムに参加した遺児と保護者を対象に、心理反応と生活行動特性の変化を質問紙を用いて調査する。スタッフの調査は、平成26年度に用いた遺児の理解度の関する調査と同様の手法を用いて定期的な調査を実施する。 ②コミュニティにおける遺児の理解の向上と支援技術の習得を目的としたプログラムの開発:スタッフ養成研修は、5~6 名で構成された複数グループに対して、計10 時間のプログラムで構成されている。開発するプログラムは、本研究で得られた遺児・保護者の実態、遺児にかかわる方々の特徴や、それぞれの遺児の理解度と支援課題、プログラムによる遺児・保護者の変化をもとに、現行の養成研修を改変した内容で開発することを計画している。 その他、平成26年度に実施した遺児に関する理解度、コミュニティにおける支援課題、スタッフ養成研修を受講した方々の遺児に関する理解度の変化についても、継続的に調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各地域での研究打ち合わせや調査の際の旅費等で使用したためである。 おおむね計画通りに使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、各地域での打ち合わせ・調査、海外プログラムの視察及び調査、調査対象者および団体への謝金、調査の実施に必要な郵送費や印刷費、通信費等に使用することを計画している。
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