研究課題/領域番号 |
26870797
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 利憲 福島県立医科大学, 看護学部, 講師 (10583031)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | グリーフサポート / 遺児 / 死別体験 |
研究実績の概要 |
死別を体験した子どもは、年齢や発達段階、生活環境、死別した方との関係などによって様々な反応を示すが、これらの反応が子どもの心身の成長発達に大きく影響し、成人期以降のうつ病の発症などのメンタルヘルスにも大きく関連する。わが国では、年間約10 万人の子どもが様々な死因により保護者を亡くしている。その1 割は自死遺児であり、多くの自死遺児が、自殺の第一発見者である。また、東日本大震災で保護者を亡くした子どもは1500 人を超え、兄弟や祖父母、友人などを含めると極めて多くの子どもたちが死別体験をしている。遺族へのサポートは、2006 年の自殺対策基本法の制定後、全国に自死遺族の支援団体が発足したことを機に急速に拡大し、現在では、他の死因の遺族へのサポートも数多く実施されている。しかし、自死遺児を含め遺児へのサポートはほとんど実施されていない。研究責任者は、2010 年に仙台市で遺児と家族を対象としたサポートプログラムを開始し継続的に実施している。現在では、自死や事故死、病死で保護者を亡くした子どもや、東日本大震災で家族を亡くした子どもたちが参加している。継続して参加する子どもが多く、プログラムの中で子どもたち同士で体験を共有し、様々な思いや感情を自分のペースで表現・発散している。しかし、コミュニティにおいては遺児に対するイメージが、支援者主導の過度な支援や一方的な支援に発展する可能性があり、このような支援が、子どもが本来持っている対処能力を奪い、子どもの成長発達に悪影響を及ぼす危険性がある。よって、本研究は、コミュニティにおける遺児支援を確立するための基礎的検討として、コミュニティの遺児のイメージを調査し、イメージの相違から属性の特徴を明らかにすること、また、プログラム参加前後の子どもと家族の変化を検証することを目的とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究計画は、遺児サポートプログラム、およびスタッフ養成研修の検証である。遺児のサポートプログラムは定期的に開催し、プログラムを通して遺児や家族の心理的・社会的・経済的な問題やニーズを把握し、プログラムを主催する研究協力団体とともに、プログラムの検証に関する討議を定期的に開催している。しかし、研究協力団体の組織改編等により、当初予定していた遺児や家族の調査、遺児サポートプログラムに参加するスタッフの養成研修の調査が実施できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は以下の通りである。 1、コミュニティにおける遺児の実態把握①全国的な遺児と保護者の実態調査(対象:遺児・遺族支援団体に所属する遺児と保護者) 2、遺児にかかわる方々(対象:保護者・教師・支援者・市民等)の支援課題の明確化①遺児に関する理解度の調査②コミュニティにおける支援課題の明確化 3、遺児サポートプログラム、およびスタッフ養成研修の検証①遺児・保護者の調査②スタッフの調査③遺児サポートプログラム、およびスタッフ養成研修の有用性の検証 4、コミュニティにおける遺児の理解の向上と支援技術の習得を目的としたプログラムの開発 今年度実施できなかった調査を含め、以上の調査を計画的に実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が当初計画よりやや遅れている。 主に各地域での研究打ち合わせや説明に必要な物品および旅費等で使用したためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度に引き続き各地域での研究打ち合わせや調査、海外プログラムの視察、研究協力者への謝金、調査・報告に必要な物品の購入、通信費等に使用する予定である。
|