わが国では、年間10万人の子どもが様々な死因で親を亡くしている。親を亡くした子どもへの支援プログラムは年々増加しているが、全国的には限られた地域でのみ開催されている。また、コミュニティにおいては遺児の理解や対応は不十分であり、家庭や学校、病院、地域での不適切な対応により、さらなる傷つき体験を繰り返している。そこで本研究は、コミュニティにおける遺児支援を充実させる(遺児支援技術の習得プログラムの開発等)ことを目的に以下の研究を実施した。 1.コミュニティにおける子ども支援・教育に携わる支援者、及び各講演・研修会に参加した地域住民、大学生を対象に、遺児のイメージ調査を実施した。収集された約400データを分析した結果、各属性によって遺児へのイメージには差があり、特に医療関係者は他と比較し、ネガティブなイメージを抱いていることが示唆された。 2.遺児支援プログラムに参加している子どもと家族を対象に、プログラム参加前後の心理的反応、生活行動特性、ソーシャル・サポートを調査した。結果、子どもの向社会性(思いやりや優しさ等)、家族の心の健康度、及び他者との関係性に差があった。 3.遺児へのコミュニティ支援を充実させるための普及・啓発を実施した。子ども支援・教育に携わる支援者を対象とした事例検討会、教育関係者、及び医療関係者を対象とした講演・研修会、地域住民を対象とした講演・研修会、遺児支援プログラムに関連する人材育成を3年間で約30回実施し、講演・研修会終了後のアンケート調査では、約80%以上の満足度は得られた。また、遺児支援プログラムに関連する人材育成においては、上記1・2の結果をもとに、研修内容を一部修正して実施した。 4.遺児支援プログラムを継続し、参加する子どもや家族からナラティブな情報を収集した。また、子どもや家族の困難事例等に関しては必要に応じて個別介入を行った。
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