研究課題/領域番号 |
26870798
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
田中 謙 山梨県立大学, 人間福祉学部, 講師 (50713533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 幼児ことばの教室 / 北海道 / 設置 / 経営 / 自治体 / 教育行政 / 福祉行政 / 医療行政 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後~現在の日本における障害のある幼児の支援を担う「ことばの教室」に着目し、特に戦後~1980年代に焦点を当て「ことばの教室」の展開要因を明らかにすることを目的としている。初年次(平成26年度)に関しては研究実施計画に基づき、「北海道言語障害児教育研究協議会」刊行の各年度『年次報告書』の分析を行った。 その結果、1970年代に8支庁24機関、1980年代に12支庁43機関と少なくとも合計67機関の「幼児ことばの教室」の開設が確認された。そして、展開過程の特質として1970~1980年代とも、教育行政のみならず、福祉行政の関与が大きいことが結果として示された。 具体的には1980年代において福祉行政、教育行政管轄下のいずれの「幼児ことばの教室」も「小学校・中学校ことばの教室併設型専任指導員配置経営型」が最も多かったことが明らかとなった。このことは小学校、中学校「ことばの教室」が「幼児ことばの教室」に先んじて整備展開がなされ、既存の「ことばの教室」に幼児専任指導員を配置して設置した機関が多かったことを指し示すと考えられる。 また自治体別の展開過程に関しても分析を行った結果、1980年代には町村規模の自治体にも「幼児ことばの教室」開設の動きが生じ、設置数が増加していく過程を有していたことが明らかになった。その中には「ことばの教室」担当小学校教諭等に兼務発令、業務委嘱を行う兼務型の「幼児指導員配置」という方法を採用して「幼児ことばの教室」を設置する自治体が確認された。 以上初年次の研究結果から、「幼児ことばの教室」は各自治体の人口や地理的要因、行政方針等の特性に応じた行政施策が採られて設置、展開がなされてきた拡大過程を有しているという特質があることが指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年次に関しては概ね研究実施計画に沿った研究活動を展開し、研究目的に沿った資料の収集・分析を行い、研究成果をあげることができた。 しかしながら、分析の過程で「幼児ことばの教室」が学齢児を対象とした「ことばの教室」と設置および経営面で関連が深かったことが同時に明らかになった。この点は研究計画では十分な位置づけがなされていなかった。「ことばの教室」の展開過程に関しても整理しなければ、「幼児ことばの教室」の展開要因を明らかにすることが困難であることが判明したため、今後研究計画の再考が必要であると考える。 以上研究成果および新たな研究課題への対応の必要性を考慮し、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と自己点検、評価した。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの到達度」にも示したように、初年次の研究成果から「ことばの教室」の展開過程を整理する必要があるという新たな研究課題が生じた。そのため2年次(平成27年度)は当初の研究実施計画の内容である個別の事例に関する分析を進めるとともに、「ことばの教室」の展開過程に関する調査研究を並行して行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年次は事例分析および「ことばの教室」の分析を進めるため、研究にかかる経費の申請を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
2年次(平成27年度)に関しては、おおよそ北海道への訪問調査旅費(300,000円)、研究発表のための学会旅費等(300,000円)、分析のための人件費(200,000円)、文献等購入費(200,000円)、研究備品・消耗品購入費(401,435円)を予定している。
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