本研究は、戦後~現在の日本における障害のある幼児の支援を担う「ことばの教室」に着目し、特に戦後~1980年代に焦点を当て「ことばの教室」の展開要因を明らかにすることを目的としている。3年次に関しては、2年次の調査結果から課題として残された北海道真駒内養護学校の「ことばの教室」の事例研究を行うとともに、これまでの研究結果から展開要因の可能性として示された議会・行政の動きと教員養成の動きについて検討を行った。 その結果、北海道真駒内養護学校言語治療教室は北海道における「ことばの教室」展開過程において「ことばの教室」の有用性と、広域を対象とする「ことばの教室」の限界を示し、各地域での「ことばの教室」設置、発展を促す社会的機能を担っていたことを明らかにした。 また札幌市立大通小学校言語治療教室設置に係る政策立案の分析から、「ことばの教室」の設置に札幌市議会議員および札幌市教育委員会の積極的な関与が確認され、議会・行政の取り組みが展開要因の一つである可能性を示唆した。 さらに全国的な「ことばの教室」の展開過程の検討を行い、言語障害教育教員養成課程等の教員養成の実施が言語障害特殊学級設置の一つの原動力となった可能性を示した。 今後の課題としては、本研究では十分な検討がなされなかった小規模自治体での「ことばの教室」の展開要因に関しても研究を行う必要性があげられる。
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