本研究課題は、障害者を兄弟姉妹にもつ人(以下、きょうだい)が、きょうだいであることをどのように周囲に開示し、経験を語るのかを当事者の語りから明らか にした上で、将来の生き方に関するきょうだいとその家族支援のあり方を検討することを目的としている。きょうだいの多くは「将来」に対して、特に結婚に悩 みを抱えており、パートナーに障害者の兄弟姉妹の存在を開示し、拒絶されることへの不安を抱えていると言われている。 本研究では、きょうだいの将来の生き方に着目し、彼らが今後共に生きるパートナー等の周囲に対してどのような思いや葛藤を抱きながら自己の経験を開示し、 語り始めたのか、実態や促進・阻害要因や問題点を明確にする。次いで、きょうだいの自己開示や語りをどのように受けとめたのか、受け手の体験を受け手の語りから明確にする。その結果から、結婚など人生の変化に伴う障害者家族に予測される危機に対する支援の可能性を検討する。 昨年度までは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、対面でのインタビュー調査というものがかなわなかったが、今年度は新型コロナウイルス感染症が5類に移行したこともあり、対面でのインタビューも実施することができた。最終的に計画していたパートナーへのインタビューまでは実施することができなかったが、きょうだい本人にインタビューを実施した。特に、周囲に兄弟姉妹の存在をあまり伝えてこなかったきょうだいにおいては、当該のパートナーと将来を共にしてもよいと思えるようになったのちに、パートナーに同様に開示するか葛藤を抱え、それを乗り越えることができた時に、兄弟姉妹、そして自分自身の存在が相手に受容されたという安心感につながるということが見えてきた。
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