平成28年度は、27年度までに実施してきた透析治療中の筋電気刺激療法に加えて、透析中に有酸素運動を異なる条件下で実施した場合の透析治療への影響を検討した。対象は、安定して透析治療を実施できている維持期血液透析患者18名(男性9名、女性9名、平均年齢56±12歳、平均総除水量2.66±0.74L)とした。有酸素運動の条件として、筋電気刺激療法と同じように治療開始後30分から60分までの30分間実施する30分群と治療開始後30分から10分運動、20分休憩を計3回繰り返す10分群の2条件を設定し、コントロールを加えた3条件にて比較した。有酸素運動はエルゴメータにて実施し、運動強度は心肺運動負荷試験の結果から嫌気性代謝閾値1分前のペダルのwatt数にて処方した。 透析治療の指標は、クリットラインモニターにて測定したBlood Volume(以下、BV)に加え、排液中の溶質としてβ2-microglobulin(以下、β2MG)、creatinine(以下、Cr)、urea nitrogen(以下、UN)、phosphate(以下、P)の除去率(%)、除去量(mg)、クリアスペース(L)を測定した。 3条件の各指標を多重比較検定にて検証した結果、いずれの群の間においても統計学的な有意差は認められなかった。また、体組成や運動耐容能など身体機能の影響についてサブ解析を行ったが、いずれの影響も認められなかった。 以上より、透析治療中の有酸素運動は透析治療への影響を認めないと考えられる。27年度に得られた透析治療中の筋電気刺激療法はUNの除去量を増加させる傾向にあるという結果と照らし合わせると、透析中のリハビリテーション介入における透析治療への影響は、筋電気刺激療法による骨格筋への直接的な機械刺激のほうが効果的であることが示唆された。
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