研究実績の概要 |
成員による職務規定に捉われない自律的な組織貢献は、組織市民行動とよばれる。伝統的な日本の学校文化では、組織市民行動は「あたりまえ」のように捉えられ、その価値を明らかにするための実証的試みは十分に行われてこなかった。本研究は、①組織市民行動が学校組織力向上に及ぼす効果、②教員による組織市民行動の構造分析および質問紙開発、③ 組織市民行動を促進するリーダーシップ、風土、成員の市民性知覚との関連について、学校組織開発の観点から検討した。 ①に関し、組織市民行動が組織の生産性に及ぼす影響に関する先行研究を展望し、日本の学校特有の組織構造を鑑みながら、教員による組織市民行動の役割や有効性について理論的検証を行った。組織市民行動の機能をTask,Relation,Changeという3つのメタカテゴリーに分類・整理するとともに、その有効性を検討するための理論的モデルを提唱した(鎌田・岡田, 2015; 鎌田(2016)。 ②に関し、日常的な組織市民行動がどのようなものであるのかについて帰納的に実態把握を試みた。更に、調査研究に活用する目的から測定尺度の開発を試みた。現職教員223名(女性113名、男性108名、不明2名)を対象とした調査に基づく測定尺度の心理測定学的な特徴については鎌田(2017)において報告した。 ③に関し、学校組織マネイジメントの視点から、、教員の自発的な組織市民行動をどのようにして導引することが可能かについて、管理職による教員へのエンパワーメントと、組織風土形成に着目し、管理職による間接的な推進可能性について検討した。現職教員165名(男性74名、女性91名)を対象とした調査によって、校長による間接的な推進の有効性が支持された。本研究結果は、日本グループダイナミックス学会の総会にて報告した(鎌田,2016)。
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