本年度は,複数のエージェントがあるグラフで協調して行動する際に,エージェント同士が直接コミュニケーションを取るのではなく,場を介して2つのフェロモンを介してコミュニケーションを取るモデルを考えた. 具体的には場に定義されるある1つの情報量から,エージェントが行った場所を自分あるいは他のエージェントも行こうとするような誘引フェロモンと,エージェントが行った場所は自分あるいは他のエージェントはいかないようにするような忌避フェロモンの2種類を計算し,その時々の解釈によりエージェントはどちらかのフェロモンに基づき行動を決定するものとする.今回は,この1つの情報量としてエージェントのノードの最終訪問時刻を用いた. 本研究ではシミュレーションのある時刻を境に,各エージェントがどちらのフェロモンを利用するか解釈を変えるアルゴリズムを実装し,計算機でのシミュレーションを行った.このシミュレーションでは,ノードの訪問回数を評価指標として用いた. 最初は誘引フェロモンに基づき行動し,その後忌避フェロモンに基づき行動する場合では,訪問回数はエージェントの初期配置位置により大きく左右されることが示された.また,忌避フェロモンに基づき行動する場合から誘引フェロモンに基づき行動する場合では,エージェントがグラフでの忌避した場所に応じて訪問回数は分散することが示された. また,今年度は昨年度の足りない分を補う目的で,スケールフリーグラフを対象として,各エージェントが忌避フェロモンにもとづき行動するアルゴリズムはグラフ構造に対してどの程度ロバストかについてシミュレーションを行った.この結果,忌避フェロモンを計算する際にはノードの次数を考慮することがよいこともあることが示された.
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