研究課題
本年度は、研究目的を達成するため、広帯域・非分散アンテナの計算機シミュレーションおよび、広帯域特性を有する小型・平面アンテナの評価を行った。小型・平面アンテナとして、ボウタイアンテナ (基板サイズ 36×25 [mm]、基板厚み 0.52 mm) および、ビバルディアンテナ (基板サイズ 52×120 [mm]、基板厚み 1.5 mm) について検証を進めた。ボウタイアンテナでは、4~13 [GHz] (1 GHz ステップ) において、それぞれ-49.7、-44.4、-37.6、-36.3、-37.9、-37.3、-40.2、-40.3、-44.8、-44.9 [dB] の挿入損失であった。また、中心方向を 0 度とし、-90 度~+90 度における放射パターンの測定を行ったところ、4~13 [GHz] (1 GHz ステップ) において、それぞれ 93、129、58、73、75、64、66、54、53、43 [度] の半値幅であった。ビバルディアンテナでは、4~13 [GHz] (1 GHz ステップ) において、それぞれ -34.0、-30.9、-29.4、-27.1、-28.2、-30.6、-33.6、-36.2、-35.7、-38.5 [dB] の挿入損失を実現し、放射パターンの測定では、4~13 [GHz] (1 GHz ステップ) において、それぞれ 70、40、40、30、26、22、20、14、18、14 [度] の半値幅を実現した。以上の性能評価を通じて、広帯域特性を有するビバルディアンテナの有効性を確認した。また、本アンテナの偏波面の違いによる検証を行い、6 GHz において 38.7 dB の差を確認した。さらに、システムにおける検証を行うため、計測システムの構築を行った。今後は本アンテナを中心にシステムへの適用を目指す。
2: おおむね順調に進展している
広帯域アンテナの実現に向けて、システムに適用可能な小型・平面アンテナである、ビバルディアンテナおよびボウタイアンテナの性能評価を行い、周波数領域における反射特性、透過特性および放射特性の測定を行い、良好な特性を実現している。また、計測システムの実現のために重要な高周波回路である、平衡信号 (差動信号) を、不平衡信号に変換するために使用されるバランの検討およびインピーダンス変換器の検討を進めており、本課題の目的を達成するための要素回路の開発についても順調に進めている。さらに、アンテナシステムの駆動のためのプログラムについても検討を進めている。研究発表については、学術論文 2 件、国際学会発表 4 件、国内学会発表 1 件と、当初の計画より多く行うことができた。以上の理由により、当初の計画に対して、おおむね、順調に進展していると考える。
平成27年度以降は、計測システムの高度化を目指し、周波数フィルタリング処理などの信号処理に加え、取付カバーの工夫により、表面反射波の低減を目指すと共に、ハードウェア・ソフトウェア両面からのアプローチにより、検知深さ・分解能の向上を図る。内部からの反射波の信号に対して、胸部モデル表面での反射波が大きいため、ターゲットからの信号が埋もれる。本課題の対策として、ⅰ)測定周波数領域を二分割するため時間フィルタリング処理を施す。低周波領域では透過性が強いが、高周波領域では生体内部で減衰するため透過性が弱く、二つの周波数領域の反射波を解析することにより、表面反射をキャンセルすることが期待できる。ⅱ)表面反射およびアンテナ間クロストーク成分を除去するため、時間領域を限定する。反射波に合成開口処理を施し画像再構成を行うが、「反射波取得→フーリエ変換(周波数領域)→周波数域を選定→逆フーリエ変換(時間領域)→合成開口処理」の手順で画像再構成を行うことにより最適な周波数を設定する。ⅲ)被験体に近い誘電率の媒質を用いて、その形状を模したファントムを作成する。それぞれに対して反射波を解析することにより、表面反射をキャンセルする。ⅳ)被験体が密着する様なカバーを形成し、被験体に被せた状態で測定を行う。表面反射波は測定毎に再現するので、キャンセルは容易である。カバーの誘電率について、被験体と同様な場合、カバーの厚みを誘電体内における波長の1/4に選ぶことで、表面反射の最小化を図る。また、アンテナ照射面を被験体表面とすることによる、表面反射波の低減についても検証を行う。平成28年度以降は、検証モデルの高度化を目指し、高いコントラストの材料の採用や、有機物によるモデルの構築を行い、より現実と近いモデルでの検証を行うと共に、検知エリア・検知確度の向上を目指す。
当該年度の計画時に購入予定であった、AWR 社の Microwave Officeについて、無償ライセンス版を活用することにより、購入費用を削減することができ、また、同様に購入予定であった、胸部モデルのファントムについて、他機関より無償で借用することにより、購入費用を削減することができたため、次年度使用額が生じた。
平成27年度に購入予定である消耗品に加え、平成26年度の未使用分を用いて、高周波部品の購入 (高周波コネクタ:5 (千円)×40個=200 (千円)、単層コンデンサ:90 (千円)) を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Review of Scientific Instruments
巻: 85 ページ: 11D820_1-3
http://dx.doi.org/10.1063/1.4890401
巻: 85 ページ: 11D805_1-3
http://dx.doi.org/10.1063/1.4885471