本申請課題では,水を用いたインタラクティブなインスタレーションを実現するための,「水と水以外の物体・影」とを正確に区別できる画像認識システムの構築を主要な目的として研究を行った.具体的には,1000nm 以上の近赤外線領域を含むマルチスペクトル画像を用い,撮像した水の形状変化に応じてリアルタイムにインタラクティブな映像投影を実現するプロジェクタ・カメラシステムの基盤技術を確立した.初年度は,研究期間全体を通して使用する予定の卓上型プロジェクタ・カメラシステムを構築し,光源の配光方法,光源・光学フィルタの波長,スイッチング手法,カメラの露光パラメータなどの物理的側面から,適切な近赤外マルチスペクトル画像の撮像条件を明らかにした.本研究における主要な課題となる影の検出については、複数波長で撮影した赤外線画像の差分情報を利用することによって実現できることを確認した.さらに,サポートベクタマシンを用いたハンドジェスチャ認識機構の実装と,様々な特徴量を用いた場合の認識性能評価までを実施した.最終年度は,近赤外マルチスペクトル画像のノイズ除去手法の開発,複数画像の情報統合手法,特徴量抽出手法,ハンドトラッキング・ジェスチャ認識手法などのさらなる高精度化を行うと共に,リアルタイム性を向上させるための前処理手法の改善などを実施し,システム全体の実用化に取り組んだ.最終的に,構築したシステムを用いて卓上型のインタラクティブアートのプロトタイプ(インタラクションにより形状が変化する卓上の水の中を,Boidsを利用して作成されたCGのパーティクルが移動する作品)を作成し,国際会議等における発表を行った.
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