研究課題/領域番号 |
26870814
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 和弥 北九州工業高等専門学校, 物質化学工学科, 講師 (10437759)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イモゴライト / ナノチューブ / メチル基修飾 |
研究実績の概要 |
本研究は天然無機ナノチューブであるイモゴライトの内周の官能基を置換した新規ナノチューブの合成を目的としている。内周の官能基置換したナノチューブは塩化アルミニウムとメチルトリエトキシシランの水溶液から合成した。まずAlとSi源を含む水溶液を混合し、pHを調整することで前駆体溶液とし、遠心分離等で前駆体を回収した。回収した前駆体を再分散させ、所定pH、加熱温度にて合成を行った。前駆体溶液をpH5.0,5.5で調整し、それを合成して得られた生成物をFT-IR測定で調べたところpH5.5で合成した生成物からはイモゴライト状構造の形成が示唆された。またナノチューブ合成時の加熱温度を50℃、75℃、100℃に分けて合成を行ったところ、75℃と100℃で合成した試料からはイモゴライト状構造の形成が示唆されたが、50℃で加熱したところ期待された結果は得られなかった。ナノチューブは前駆体間の縮合反応により合成されるため、反応温度、および反応時間が足りなかったと考えられる。また前駆体溶液のpH調整の為強塩基NaOHと弱塩基NH3水溶液の使用を検討したところ、NaOH水溶液で調製して得られた合成物からはイモゴライト状構造の形成が示唆された一方で、弱塩基性のNH3水溶液を用いた場合、ナノチューブ形成の証拠は得られなかった。またチューブ状構造形成が示唆された試料の原子間力顕微鏡像を観察したところ、長さ数100nmの棒状構造が確認された。長さは通常の合成イモゴライトと比べて短いものと推測される。以上、前駆体を用いたメチル基修飾イモゴライト状ナノチューブの合成条件を見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Si源としてメチルトリエトキシシランを用いてメチル基修飾イモゴライト状ナノチューブの前駆体およびナノチューブの合成条件は見出すことができたが、メチル基の代わりに水素元素やビニル基を導入したナノチューブの前駆体およびナノチューブ本体の合成は十分に検証できていない。また生成物にはナノチューブ以外にも粒子状、板状の構造体が形成されており、それらナノ構造体についてもより詳細な構造評価や形態観察を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、メチル基以外の置換基を有するSi源を用いたナノチューブ前駆体およびその前駆体からナノチューブが形成可能か検証する。Alと置換基を有するSi源を含む水溶液を混合しpH調整により前駆体を生成回収し、前駆体形成の確認を行う。形成の確認は、分子モデリングソフトの計算結果から得られたFT-IRスペクトルとの対比により行う。確認後、他の測定手法によりキャラクタリゼーションを行う。また調製した前駆体を加熱合成することで得られる生成物の構造評価、形態観察を行い、ナノチューブ状構造が形成されているか確認する。 またメチル基修飾イモゴライト状ナノチューブの合成時における溶液中の共存イオンの影響について詳細な検討が出来ていないため、前駆体を再分散させた合成用溶液の発光分光分析(ICP)測定を行い、共存イオンによるナノチューブ生成率への影響を調査する。また得られたメチル基修飾イモゴライト状ナノチューブの特性評価として、定容量式ガス吸着装置を用いて比表面積や細孔分布を計測する。メチル基以外の置換基を導入し合成できたナノチューブについても同様に評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入したワークステーションが希望した製品と同等品で価格の安いものを購入できた為。
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次年度使用額の使用計画 |
一部国内学会の旅費として計上予定、他に反応溶液の元素分析の為の発光分光分析(ICP)装置の消耗品の購入、研究補助の専攻科生への謝金として計上予定
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