本研究では、マッキントッシュやバジョットを中心に、19世紀ウィッグの政治的妥協論を分析した。ウィッグによれば、イギリス国制は、多様な政治主体の「自由」の確保と単一の政治秩序とを同時に実現する「自由な統治」であることに存在意義があった。そのゆえに、ウィッグは、「自由な統治」に相応しい決定方法は、ある政治的問題の最終的な解決をもたらす「決断」ではなく、妥協だと考える。なぜなら、多様な政治的要素の存在とその維持を前提に、常にそれらと交渉し、それらをとりまとめることをめざす妥協こそが、多様性の確保を本質とする「自由な統治」の維持を可能にする唯一の決定方法だからであった。
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