研究課題/領域番号 |
26870819
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
杉本 弘文 都城工業高等専門学校, 建築学科, 講師 (40570247)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生活・居住環境 / 集合住宅地区 / ウランバートル / 都市開発 / 経年変化 / 施設分布 / 生活・コミュニティ意識 / 生活・余暇活動 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、以下の調査・分析を実施した。先ず、意識・活動調査として前年度に引き続いて集合住宅管理組合、ウランバートル市役所、建設省、モンゴルJICAにおけるヒアリング調査等をモンゴル科学技術大学建築学科・ゴンチグバト教授、日本語学科・サインビレグ講師及び学生の協力の基で行い、ウランバートル市街地を中心とする都市計画の現状と将来計画、集合住宅地区の管理運営状況等に関する実態把握を行った。更に2015年8月に調査対象集合住宅地区に付随する屋外共用空間における空間構成調査及び活動実態調査(利用状況目視調査)を行い、居住者が日常生活を営む際に屋外共用空間でどのような生活・余暇・コミュニティ活動を行っているかを平日・休日別に把握した。同時に、2003年に実施した同様の調査と比較分析し、都市部集合住宅居住者の屋外共用空間における生活・余暇活動の経年的変化に着目して分析を進めている。 次に、生活・居住空間の実態調査(2015年5月、8月実施)として、集合住宅地区周辺(半径500m領域)の生活・余暇関連施設の分布状況を施設数、施設種別・内容、空間・機能構成等に分類した上で把握すると共に、GISを用いて施設分布状況を可視化し、過去調査と比較するためのデータベースを構築している。加えて、ウランバートル市街地内に設定した中心部を含む調査対象地域(約6.13k㎡)内の集合住宅、コモンスペース、教育施設、大型商業施設に関する分布状況調査より、施設数、施設密度、施設間隔距離等を明らかにし、各施設の分布状況の傾向を把握すると共に、2002年時と2015年時のデータの比較からウランバートル市街地の空間的変容を定量的に考察している。 研究の成果は、日本建築学会大会学術講演会、日本建築学会九州支部講演会等で論文発表・講演を行うと共に、研究協力機関や研究協力者と情報共有しながら分析・検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に則り研究を遂行しており、当該年度の研究目標は概ね予定通りに達成している。 ソフト調査として、集合住宅居住者に対するアンケート調査及び関連機関におけるヒアリング調査内容に関しては研究協力機関(モンゴル科学技術大学建築学科・日本語学科)の協力の基、概ね翻訳作業が終了しており、本研究に関連して過去(2002年、2007年)に実施してきているアンケート調査との比較及びデータ分析を行い、学術論文の執筆を進めている。併せて、2015年8月に集合住宅地区の屋外共用空間における活動実態調査(目視調査)を平日・休日別に実施し、2003年8月に実施した同様の調査との比較から屋外共用空間における生活・余暇・コミュニティ活動の変容について分析を進めている。 ハード調査として、都市環境の変容が著しいウランバートル市街地において、その変容を定量的に把握するため、ウランバートル市街地内に設定した中心部を含む調査対象地域(約6.13k㎡)の各種施設の分布状況(施設数、施設密度、施設間隔距離等)に関する調査を2015年8月に実施した。現在、2002年時のデータとの比較・分析を進めており、ウランバートル都市部の空間的変容をGISを活用して可視化しながら定量的に考察し、各種施設の適正配置を行うための計画的方法論について研究協力機関と協働して検討している。 また、研究協力機関と研究代表者の所属機関(都城工業高等専門学校)の間で教員・学生交流が進んでおり、2015年8月には都城高専から学生7名(建築学科・物質工学科)がモンゴル科学技術大学を訪問し、学生交流及び海外インターンシップ(学生による現地での調査・研究の実施)を行った。更に、2015年9月にはモンゴル科学技術大学建築学科教員1名、学生1名が都城高専を訪問し、共同研究の打合せ、国際シンポジウムへ参加した。以上のように研究協力体制は更に充実してきている。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究期間における研究計画の変更はなく、本研究課題の最終年度となる平成28年度はこれまでに蓄積した研究データを基に精力的に国内外の学術誌に学術研究論文の執筆に取り組む予定である。 研究遂行上の課題として、昨年度も報告したようにウランバートル市街地における都市環境の変化は現地研究機関、政府機関も把握しきれないほど急速であり、正確に都市環境の実態を掴むことが難しい。加えて、現地関係機関のヒアリング調査(2015年)によると民間で行われている商業・業務施設や集合住宅等の建設速度に現状調査が間に合わないため、行政機関も土地利用現況図や建物用途現況図等の作成を殆ど行っていないようである。また、モンゴル人の土地所有の概念や定住・移住の概念は日本を含めた諸外国とは異なる状況もみられ、都市環境のみならず、人(都市居住者)の移り変わりも早い。 そのような状況の中で、施設配置状況等を含めた現況の定量的把握を行うには短期集中的に調査を行い、ある調査時点におけるデータの蓄積が重要だと考えている。そのためには現地研究協力機関と密に連携し研究を遂行することが必要不可欠であり、現在、モンゴル科学技術大学建築学科・ゴンチグバト教授や研究代表者の研究室に所属経験のあるボロルマ講師を中心として、モンゴル科学技術大学日本語学科、更にはモンゴル高専学生、日本の高専留学経験者らの協力の基、現地での調査活動を行うための基盤が強固に整備できつつある。 平成28年度の研究計画として、2016年8月にウランバートルにて現地調査及びモンゴル科学技術大学において研究協力者らによる研究打合せを実施予定であり、学術研究論文の執筆に向けたデータ分析方法の検討、意見交換等を行うと共に、今後の研究内容・研究課題・研究計画等について詳細な話し合いを行う予定である。加えて、本研究期間中に得た成果をモンゴル関係機関に還元するための方策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は2度(2015年5月、8月)に渡りモンゴル・ウランバートルにおいて現地調査および研究協力機関(モンゴル科学技術大学)との打合せを実施したが、そのうち2015年8月の渡航実施においては、実施に関わる旅費の一部が所属機関より支給された(高専・企業・アジア連携による実践的・創造的技術者の養成:9高専連携事業に伴う教員・学生交流と併せて実施した)ため、平成27年度に使用予定であった経費(モンゴル・ウランバートルでの調査に関わる旅費分)の一部を次年度使用とした。また、現地の調査実施における通訳料について、一部期間において研究協力機関の学生(モンゴル科学技術大学日本語学科)及び高専留学経験のある学生がボランティアで調査実施の協力をしてくれたため、その経費を次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用とした経費を活用して、現地の行政機関・学術研究機関より提供をうけた都市計画・マスタープラン等に関する専門的資料(モンゴル語のみ)の翻訳を依頼し、ウランバートル市街地の将来計画に関する知見を深めると共に、研究協力者(補助員)と共にその分析を行い、現地の研究協力機関との今後の都市環境整備に関する計画的方法論の検討を更に深めたいと考えている。また、最終年度となる次年度は本研究機関における成果を取り纏めて研究報告書を作成・製本し、モンゴルの研究協力機関に還元したいと考えているため、その作成費用としても活用したいと考えている。
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備考 |
「都城工業高等専門学校」「都城高専建築学科・杉本研究室」のwebページではモンゴル科学技術大学やモンゴル関係機関との国際協力・国際交流、調査実施状況等が掲載されている。「高専・企業・アジア連携による実践的・創造的技術者の養成」のwebページでは九州・沖縄地区の9高専連携事業(MOU締結校のひとつとしてモンゴル科学技術大学がある)について掲載されている。
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