研究課題/領域番号 |
26870820
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 利幸 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (50453535)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物機能利用 / 生物機能工学 / 排水・排ガス・廃棄物等発生抑制 / 環境浄化 / 水域汚染 / 細胞機能 / バイオマス |
研究実績の概要 |
窒素処理法の1つである生物学的処理法は、複数の微生物を使用し、設備投資と装置維持にある程度の運転コストを要する。本研究では、上記の代替法として、微細藻類含有型の不溶性担体を用いた新規除去法の開発を目的とした。本研究で使用する当該藻類は、栄養塩としてアンモニウムイオンを消費でき、排水中の窒素濃度の減少を期待できる。また、上記藻類は、体外に糖を分泌する特性を有するため、窒素を除去するだけでなく、廃棄対象を生産性のある『有機物質(糖類)』へと変換できる。 当該藻類含有カプセルゲルは、廃水のような生物にとって厳しい環境下での使用を期待される。したがって、厳しい環境中においても当該カプセルが長期間その形状や活性を維持できるかどうかは重要である。そこで本研究では、当該藻類カプセルをアンモニア性窒素含有溶液に1週間浸漬し、当該カプセルの形状観察及び当該カプセルによるアンモニア吸収能を分析化学的に評価した。その結果、藻類密度により高濃度のアンモニア性窒素含有溶液でも当該藻類の活性を観察でき、またカプセル形状を維持していた。また、当該藻類の機能により、溶液中のアンモニア濃度の有意な減少を観察できた。 本研究で、当該藻類含有カプセルはアンモニア性窒素含有溶液に対して耐性を示した。しかし、一見するとカプセル形状に変化がなくとも、材料の物性的にもろくなっている可能性もある。そこで、材料万能試験機を用いたカプセル強度の物性評価を行った。特に本年度は、この評価法の確立を目的とし、藻類非含有カプセルと含有カプセル間での物理強度を比較した。その結果、藻類含有カプセルは、藻類非含有カプセルよりも若干物理強度が弱くなった。一方、当該藻類含有カプセルは、手でつまんでも十分な弾力を有し、壊れない。今後、寒天やゼラチンなど既に工業利用されている材料と比較し、当該藻類含有カプセルの物理的強度を再評価する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の研究計画では、(実験項目1)廃水を想定した厳しい環境(高濃度の窒素化合物存在下)において、上記藻類カプセルを各種顕微鏡による形状観察及びテクスチャー・アナライザー(万能試験機と同様)による物理強度試験から解析し、さらに、(実験項目2)上記環境中における当該藻類の活性の有無を当該藻類のクロロフィル活性や残存窒素濃度を指標に解析することを計画していた。実験項目1は、アンモニア性窒素含有溶液に浸漬した当該藻類カプセルの光学観察から評価した。また、万能試験機による評価は、窒素含有溶液に浸漬したカプセルではまだ行っていないが、本年度の研究を通して当該評価法を概ね確立したところである。実験項目2は、アンモニア性窒素含有溶液に浸漬した当該藻類カプセルのクロロフィル活性をクロロフィルに由来する緑色濃度から評価した。また、その際の溶液中の残存アンモニア性窒素濃度も既に評価したところである。
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今後の研究の推進方策 |
当該藻類カプセルを用いて、一定期間中の処理液中の窒素含有量の変化を経時的に追跡調査し、窒素除去機能を解析する。さらに、既存の方法と比較し、当該藻類含有カプセルの有用性を評価する。特に、既存の窒素処理法の最大処理濃度(例:活性汚泥法で最大約5000 mg/L・N、アンモニア・ストリッピング法で最大約3000 mg/L・Nの窒素を処理できる)と比較して、本研究で開発する藻類含有カプセルの最高処理濃度を明らかにし、当該藻類カプセルの有用性と実用化への可能性を検討・評価する。 また、前年度にデータ採取できなかった窒素含有溶液に浸漬したカプセルに対する万能試験機による物性評価を行う。さらに、寒天やゼラチンなど既に工業利用されている材料と当該藻類カプセルの物性強度を比較し、当該藻類含有カプセルの物理的強度を再評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね使用したが、若干残額(1200円)が生じた。しかし、その他の必要物品(試薬等)を購入するにはあまりに残額が少なすぎ、有効活用できないと考えたため、次年度に活用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、当該カプセルのクロロフィル活性は、視覚的に緑色濃度を検出している。クロロフィルは、肉眼的な緑色の評価の他に、適切な励起光の照射によるクロロフィルの蛍光評価が可能であり、一般に蛍光評価は分析精度が高い。一方、当該カプセルは、その厚み(直径)のために、例えば光量が弱い市販の青色LED(現所属機関の所有の解析装置に搭載)などでは励起光が十分にカプセル内部まで届かず、精度よく蛍光評価できなかった。既存の分光装置(蛍光分光光度計)には、LED光源よりも強い光源が搭載されているため、固体試料の分析にも利用できるが、標準では液体試料ホルダーしか搭載されていない。そこで、本年度の助成金と合わせて本研究経費として、固体試料用の分析ホルダーを購入し、当該藻類カプセルのような固体試料のクロロフィル蛍光測定用に用いる。
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