2009年における南極昭和基地の有人観測による降雪記録に基づき、客観解析気象データによる気圧・比湿のデータ解析から、降雪時に特徴のある気圧パターンを抽出できた。このパターンは近隣の自動気象観測器によって降雪イベントが観測された際の擾乱システムと同様であることが確認でき、沿岸部から内陸部にかけて南極氷床への涵養に大きな影響を与える降雪と関連が深いことが示唆された。 しかしながら、降雪量の違いについては気圧や比湿の空間分布からは推定が難しく、この問題に対して、平成27年度では衛星観測による雲画像データから、雲の面積・高度の推定を行い、水蒸気量としてのパラメーターとなりうるか検討を行った。衛星観測による輝度温度を用いた雲の識別アルゴリズムをデジタル画像処理に基づき開発した。結果、1事例ではあるが南極内陸上まで侵入する擾乱システムに伴う雲の検出に成功し、今後同様な事例を検出することで、降雪量の多い雲と少ない雲の識別が可能となることが期待できる。 涵養量の推定モデルについては、上記の状況からプロトタイプの完成には至らなかったが、雲情報を水蒸気量に関係したパラメーター化することで、これまでの入力値だけは推定が難しかった降雪量の推定が可能になることが予想できる。今後、本研究を基に、降雪量の多い雲と識別された雲パターンを教師とした自動抽出を実施し、年間涵養量の推定およびパラメーターとしての重み計算を実施する予定である。 また、当初予定には無かったが、国際共同研究として、南極域全体について結合された衛星雲画像に本手法を適用させ、降雪をもたらす擾乱システムを抽出・解釈を進める研究を平成27年度途中より開始した。
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