研究課題/領域番号 |
26870823
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
滝脇 知也 国立研究開発法人理化学研究所, 長瀧天体ビッグバン研究室, 客員研究員 (50507837)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 高精度計算 / 超新星爆発 / 輻射輸送 |
研究実績の概要 |
本研究は超新星爆発のメカニズムにおいて,重要な輻射輸送スキームの開発を行うものである.特にスパコンでいかに効率よく計算するかという点に重きが置かれているが,近似解法を用いた場合には,その手法の限界,つまりどの点は第一原理計算と同じで,どの点は違うのかについても,明らかにする必要があるだろう. 本年度は,昨年度開発に成功したM1クロージャースキームについて論文にまとめた.Kuroda et al. 2016としてAstrophysical Journalから出版されている. 他方で,こうして開発したスキームが他の方法とどれほどコンシステントなのかについて,考察を進めた.それというのも,近年,超新星爆発の計算結果がグループごとに異なっていることが問題になっているからである.計算結果に差が生まれる一つの大きな原因は輻射輸送の計算法であるため,各グループの結果の違いが何によっているのか,早急に確かめる必要がある.結果の比較にはこのM1クロージャーのスキームと,もう少し簡単でこれまで我々がよく使ってきたIDSAのスキームを用いた. 結局,計算結果の違いは入力物理であって,輻射輸送法そのものではないことが分かった.比較の結果,もし,入力物理を完全に同じにしたら,各グループの結果はほとんど同じになることが分かったからである.入力物理とはニュートン力学で解くのか,一般相対論の効果を取り入れるのかと,どのニュートリノ反応をとりいれるのかを指す.結局,他のグループと完全に同じ入力物理で計算を行う必要があり,少し手間がかかったが,我々の計算結果にも自信が持てる結論となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の実績欄に書いたとおり,最初のコード開発は順調に進み,それを論文で発表し,結果は認められている.一方で計画ではさらに高精度の輻射輸送のスキームに進む予定であったが,そのコード開発は若干遅れている.その理由は実績欄で書いたように,超新星の計算結果が各グループで違うことが問題視され,それの解決に力を注いだからである.このような状況化では,スキームをより高精度化するよりも,それまでの結果を正当化するほうに力を割かざるを得なかった.結果,超新星のコミュニティ内外での計算の信頼性が高まって非常に良い成果を得ているが,一方で計画には若干の遅れが生じている.そのプラスマイナスを勘案し,おおむね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の後半にあるボルツマン輸送のコード開発を精力的に進める必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算に必要なハードディスク代を多く見積もっていたが,国立天文台の設備を使うことで節約できた.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した分も含め,精力的に研究会に出かけ,発表を行いたい.その旅費に使用する.
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