研究課題
平成27年度は、①北米と日本の淡水型においてTSHb2の日長応答性の喪失をもたらした具体的なゲノム配列と分子機構の変化の解明と②イトヨの生活史にけるTSHb2の機能解析を行い、それぞれにおいて著しい進展があった。①では、平成26年度に行った北米集団を用いた短日条件でのTSHb2発現量のeQTL解析に加えて、日本集団でのTSHb2発現量のeQTL解析を行った。非常に興味深いことに、北米集団ではTSHb2自体に短日条件下でのTSHb2発現レベルのQTLがあったのに対して、日本集団ではそれらは存在しなかった。これは、日本集団のTSHb2発現量の違いはtrans因子によって決定しているという研究代表者のこれまでの研究成果と一致する。また、海型、淡水型の下垂体でのTSHb2のin situ hybridizationを行い、TSHb2は短日条件下の海型の下垂体の、非常に少数の細胞で強く発現していることを見出した。そこで、海型の下垂体を用いて、single cell RNAseqを行い、TSHb2と共発現している転写因子の探索を行い、TSHb2に対して日長条件の情報を与え得る幾つかの候補転写因子を得た。②では、平成26年度に行ったTALEN法を用いて作成したTSHb2ノックアウトイトヨのオスの精巣発達レベルの解析に加え、成長率、呼吸量、メスの卵巣発達、下垂体での生殖腺刺激ホルモン遺伝子、脳のトランスクリプトームに対するTSHb2の影響を解析した。この結果、短日条件下の海型におけるTSHb2の高い発現量は、オスにおいて生殖腺刺激ホルモンの発現量や脳のホルモン関連因子の発現を抑制し、精巣発達や成長率を抑制することが分かった。一方、メスでは一部の生殖腺刺激ホルモンはTSHb2と独立に動いていることから、TSHb2とは別の経路で繁殖系が日長情報を得ていると考えられた。
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Evolutionary Ecology Research
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Indonesian Journal of Ichthyology