研究課題/領域番号 |
26870829
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
石崎 仁將 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主任研究員 (10414103)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | WecA阻害 / アラビノガラクタン生合成 |
研究実績の概要 |
本研究は、抗結核菌活性を有するCPZEN-45 の結核菌に対する作用機序の全容を明らかにする事を目的としている。以下にこれまでの成果を記すが、当該年度はCPZEN-45が結核菌のアラビノガラクタンの生合成を阻害する事、ペプチドグリカン生合成に関与する酵素MurXは主たる標的ではない事を明らかにした。 抗酸菌用の発現ベクターの開発:現在汎用されている抗酸菌用の発現ベクターに代わる、高発現かつテトラサイクリン系抗生物質以外の誘導物質を用いた系の構築を目指している。これまでに、誘導物質4種を用いた系を構築したが、いずれの系においても明確な発現誘導、十分な遺伝子発現量を認めるには至っていない。 結核菌のMurX活性に対するCPZEN-45の影響:結核菌の細胞壁・細胞膜画分のMurX活性を評価する系を構築し、CPZEN-45による阻害効果を検討した。その結果、CPZEN-45による阻害効果は、IC50にして3 ug/mlと、WecA阻害効果(IC50=4 ng/ml)と比較して極めて弱いものであった。 結核菌におけるアラビノガラクタン新規合成に対するCPZEN-45の影響:RIラベルした結核菌の細胞壁を加水分解し、得られた単糖をTLCで分画し放射活性を調べる事で、CPZEN-45のアラビノガラクタン新規合成に及ぼす影響を検討した。その結果、1 ug/mlの低濃度でもアラビノースとガラクトースの取り込み、すなわちアラビノガラクタンの生合成が阻害される事を見いだした。 AGリガーゼ候補タンパク質の発現:CPZEN-45の標的の第3候補として考えているAGリガーゼは未だその酵素本体が同定されていない。これまでに、当該酵素の候補と考えている2種のタンパク質について、その遺伝子をクローニングし大腸菌での発現を試みている。その結果、発現量は少ないながらも、2種のタンパク質の発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の実験計画に照らすと、抗酸菌用の発現ベクターの構築はやや難航し、予定より遅れている。 しかしながら、実験協力者と実験計画を再調整した結果、予定より大幅に早く、M. smegmatisを用いた実験を行うこと無く結核菌を用いた実験を開始する事ができた。本研究の最終的な目的は「CPZEN-45 の『結核菌』に対する作用機序の全容を明らかにする」ことであるので、この観点からは予定より早く研究が進められていると考える事ができる。 以上のことを総合的に勘案すれば、最終目的の達成のためにはおおむね順調であると判断して差し支えないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行するにあたり、現在抗酸菌用の発現ベクターの開発が律速段階になっているので、この達成を急ぐ。誘導物質および制御下プロモーターの変更、遺伝子導入方法(プラスミド、ゲノム挿入等)の変更、GFPに代わるレポーター遺伝子の変更などが考えられる。また、高発現のためにT7 RNAポリメラーゼを用いた発現系を抗酸菌に適用しようと考えているが、期待した発現量を得られていない。この原因として、T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子のコドンが抗酸菌に最適化していない事が考えられるので、コドンの最適化も視野に入れて検討を進める。上記の検討を加えても好ましい結果が得られない場合、次善策としてgroEL遺伝子等の高発現プロモーターを用いてwecA、murX、AG ligase遺伝子を発現させる事も考えている。 また、AGリガーゼ候補タンパク質の発現に関しては、定法に従った検討を進める。具体的には宿主大腸菌の種類、培養温度、培養時間、誘導物質の濃度と添加のタイミング等を検討し、当該酵素の高発現、精製、機能解析を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はほぼ計画通り助成金を使用したと考えており、実際、次年度使用額は所要額の3%以下と端数程度である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験機器のアクセサリ(恒温器のブロック)の追加購入に充てる予定である。
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