研究課題
本研究は、抗結核菌作用を有する化合物 CPZEN-45 の作用機序を完全に解明することを目的としている。標的酵素の最有力候補として、アラビノガラクタン (AG) 生合成に関与する酵素 WecA、これに次ぐ候補として WecA のパラログで、ペプチドグリカン生合成に関与する酵素 MurX、また WecA と類似した反応機構を有し、AG のペプチドクリカンへの転移を触媒する AG リガーゼに着目し、それぞれについて検討を進めた。その結果、結核菌において、CPZEN-45 が WecA の活性を強く抑制すること、また AG の新規合成を強く抑制することを見出し、このことから CPZEN-45 の作用機構は WecA の阻害に起因する AG 生合成阻害である可能性が極めて高くなったと考えている。この可能性をより確実なものにするため、遺伝学的手法を用いて WecA を高発現した株を用いた CPZEN-45 の抗結核菌活性評価を計画している。これまでに幾つかの遺伝子改変株を作成し、遺伝子の発現量と抗菌活性を評価している。また、CPZEN-45 は結核菌の細胞膜・壁画分における MurX の活性をわずかに阻害したが、WecA 阻害活性と比較すると IC50 値にして約 1/1000 と極めて弱いものであった。このことから、CPZEN-45 の抗結核菌活性に MurX はほとんど無関係であると考えられた。また、AG リガーゼに関しては、その酵素本体が同定されていないため、この同定を達成する必要があった。申請者は研究協力者が主導する研究に酵素の異種発現等で協力し、酵素本体(2つのパラログ)をほぼ特定した。現在、結核菌の近縁種である M. smegmatis および M. bovis BCG 株の AG リガーゼ遺伝子の破壊を進めている。
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