研究課題
神経セロイドリポフスチン症Ⅰ型は、ライソゾーム酵素であるpalmitoyl-protein thioesterase 1(PPT1)遺伝子変異を原因とする。PPT1は、S-アシル化タンパクからパルミチン酸残基を取り除く酵素である。乾燥濾紙血を用いたスクリーニング検査が有効であり、皮膚繊維芽細胞やリンパ球の酵素診断、遺伝子診断により確定診断される。PPT1遺伝子欠損により小脳の神経細胞変性が生じ、記憶障害・知的障害・視力障害・てんかん・運動障害など、多様な臨床症状をきたすが、そのメカニズムは解明されていない。これまでに、日本人例の2変異、欧州のcommon mutationである3変異を有する細胞株の構築を行い、PPT1活性の有意な低下を確認した。細胞全体のパルミトイル化を網羅的に検討するため、パルミトイル化されたシステインをビオチン標識するacyl-biotinyl exchange assay (ABE assay)を行い、疾患細胞株でのみ検出されたパルミトイル化タンパク質を抽出した。LC/MS/MSによる同定を試み、有力な2分子が候補として示された。1つは、核内移行して、脳血管内皮細胞の密着接合や基底膜の構成成分を分解する酵素の活性化や、アポトーシス誘導に関わる因子である。また、もう1つは、脳血管内皮細胞のアクチン重合の調整因子であった。これらの異常は、血液脳関門の脱落を引き起こす直接的な原因に成り得ることから、本疾患の神経変性のメカニズムであることが示唆された。
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Molecular Genetics and Metabolism
巻: 120 ページ: 173-179
10.1016/j.ymgme.2017.01.002