研究課題/領域番号 |
26870834
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五名 美江 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (10579444)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面流 / 降雨量 / 間伐 / 表層土壌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ハゲ山からの森林再生によって降雨量-直接流出量関係が変化したメカニズムを解明することである。降雨強度が大きい場合は、浸透能の増大や土壌中の大量かつ長時間の一時貯留効果が発揮されたのではないかという可能性、森林が成立していることで樹冠遮断蒸発量による効果が発揮された可能性を、同流域内に残存するハゲ山と森林に覆われた場所において、検証する。そのために、Aプロット(森林)、Bプロット(森林→伐採→ハゲ山)、Cプロット(ハゲ山)を設け、同じ観測システムを設置して、同じ降雨量に対する表面流の違いを捉える。2年目は1年目に取得したデータの解析を行い、研究成果として発信するとともに、Bプロットに変化を加える前にAとBの違いを明らかにする必要性から、転倒マス型量水計を分解能の細かいものに再設置することを決めた。本年度は、これまでに取得したデータを用いて、中部森林学会および日本森林学会で研究成果を発表した。ハゲ山からの森林再生によって流域からの直接流出量が減少することが見いだされ、そのメカニズムとして蒸発散量の変化のほかに出水時の流出プロセスが変化した可能性が指摘されている可能性を検証するため、ハゲ山斜面と森林斜面の表面流量の比較を行うことを目的とした研究成果を取りまとめた論文が受理された。主な成果として、広葉樹二次林に比べて裸地の表面 流量は常に多いが、その割合は3 倍から16倍までの幅があり、1 ㎜/5 分以上の降水強度の降水量の割合が多いほど、倍率が大きいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3プロットのデータは順調に取得できているが、変化を加える予定のBプロットと、そのままにしておくAプロットの森林間の差異による出水時のデータの解析が不十分と判断されたため、Bプロットの伐採を遅らせている。理由は、研究を進める中で、Bプロットの森林を伐採する前に、地表面を覆っているリターを取り除くなどの細かい変化を与えて、表面流の違いに影響を与えそうな地表面のリター、枝、等それぞれの一時貯留機能の評価を行うと、当初予定していた以上の、興味深いデータが取得できる可能性が出てきたためである。
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今後の研究の推進方策 |
3プロットの表面流データを数多く取得して、降雨パターンによる表面流の違いを定量的に明らかにする。定量化が終了したのち、Bプロットのリターを除去する。その状態で、なるべく多くの表面流データを取得して、森林におけるリターの有無が表面流にどの程度影響するのかを定量的に把握する。その後、Bプロットの森林を伐採する。その状態で、さらに表面流データを取得し、十分なデータが取得できたのちに、Bプロットに残された切り株を抜き取る。抜き取ったのちの表面流データを取得し、間伐だけの状態と、切り株まで除去した場合では表面流にどれほどの違いがでるのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
3プロットのデータは順調に取得できているが、変化を加える予定のBプロットと、そのままにしておくAプロットの森林間の差異による出水時のデータの解析が不十分と判断されたため、Bプロットの伐採を遅らせているためである。理由は、研究を進める中で、Bプロットの森林を伐採する前に、地表面を覆っているリターを取り除くなどの細かい変化を与えて、表面流の違いに影響を与えそうな地表面のリター、枝、等それぞれの一時貯留機能の評価を行うと、当初予定していた以上の、興味深いデータが取得できる可能性が出てきたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
定量化が終了したのち、Bプロットのリターを除去するための消耗品類、Bプロットの森林を伐採する際の作業に必要な経費として使用予定である。その他、研究成果の公表のための英文校閲、学会参加費等に使用予定である。
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