研究課題/領域番号 |
26870837
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
清水 裕太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター・生産環境研究領域, 研究員 (50625829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチエージェントモデル / 水文流出モデル / 土地利用変化 / 耕作放棄 / 栄養塩 / 流域 |
研究実績の概要 |
水田の耕作放棄に伴う水文プロセスの変化について、前年度に引き続き、異なる種類の水田土壌が充填されたライシメーターを用いた観測および既往文献を参考に検証を行った。その結果、放棄後経過時間に応じて水・栄養塩流出量は変化し、特に放棄前の水田が乾田か湿田かの違いにより大きく異なること、さらに水田の耕作放棄の進行による土壌の物理性の変化や木本類の侵入により、最終的に流域末端への流出に影響を及ぼす可能性が示された。流域スケールでの耕作放棄の影響を評価するため、小流域スケール(数平方km程度)および大流域スケール(1,000平方km程度)を対象に水文流出モデルSoil and Water Assessment Toolを用いた水田土地利用変化のシナリオ解析を行った。小流域スケールの解析では、放棄後数年~数十年が経過した水田のパラメーターを導出するため、広島県東部の中山間流域を対象に詳細な調査を行い、現在(放棄後)および過去(放棄前)の土地利用を用いた推定結果からパラメーターを決定した。大流域スケールの解析では中国地方の一級河川のうち4流域を対象に、中山間地域に位置する傾斜地農地が農業従事者の高齢化等に起因する耕作放棄により荒地化した場合、および市街地(平地)の農地が宅地化した場合のシナリオについて、水・栄養塩流出量の変化を同水文流出モデルにより推定した。その結果、水田が耕作放棄により荒地化した場合、土砂および懸濁態窒素・リン流出量が増加する結果が示された。将来の水田土地利用変化を現実的な範囲で予測するモデル(ソフトウェアSwarmを用いたマルチエージェントシミュレーションモデル)は、初年度に構築した農家の意思決定ルールを基に構築し、検証および改良を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水田の耕作放棄が水・栄養塩流出に及ぼす影響について、ライシメーターを用いた試験結果および既往文献の整理によって、概ね明らかとなった。また、流域スケールでの水田減少に伴う栄養塩流出変動リスク評価を行う基盤となる、水文流出モデルの各種パラメーターが観測結果等より決定され、土地利用データを入力することで栄養塩流出変動リスクを評価できる状態となった。将来の土地利用を予測するマルチエージェントモデルは、検証と改良を続けているところであるが、全体的に概ね計画通りに進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
土地利用変動を予測するマルチエージェントモデルSwarmを水文流出モデルSWAT に連結させ、複数の社会情勢・農業政策シナリオ下の水田の土地利用変動を1年毎に推定し、その変化に伴う窒素・リン流出量の変動を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に予算を使用した結果、若干の金額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費もしくは消耗品購入に使用する。
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