昨年度までに,実規模施設で堆肥発酵熱を高熱源としたバイナリ発電の実証試験を行い,発酵熱を利用して連続的な発電が可能なことおよび,発酵熱を利用する上での課題と条件が明らかになった。 これを受けて,今年度は,1)他の堆肥化方式における排気温度の調査および,2)430L規模の堆肥化装置を用いて,利用可能エネルギであるエクセルギを指標として,より効率的に発酵熱を抽出できる堆肥化条件の検討を行った。 1)については,昨年度実証した吸引通気式堆肥化施設1施設(以後,吸引式)に加えて,吸引通気方式と同様に高温の排気が得られる密閉縦型堆肥化施設3施設(以後,密閉型)の調査を行った。その結果,密閉型は,3施設ともに吸引式に比べて,排気温度が高かった。一方,吸引式は,60℃以上の継続時間が最も長かった。これは,2週間程度の短時間で堆肥化を終了させる密閉型は,発酵熱の発生も盛んである一方,毎日新規の原料が投入されることにより温度が低下することに起因した。安定した発電を行うという観点からは吸引式が適していると考えられた。 2)については,430L規模の堆肥化装置を用いて,牛ふんを主体とする原料の堆肥化を行い,堆肥としての品質を担保しつつ,より高い排気温度およびエクセルギが得られる通気条件を明らかにするとともに,発酵熱発生とエクセルギ発生の関係を明らかにすることを目的として試験を実施した。その結果,間欠的に通気を行うことで空気を供給しつつ,無駄に熱を持ち出すことがなく,エクセルギ率の高い排気が得られることが明らかになった。また,排気のエクセルギは,堆肥原料温度が上昇ピークに達した後に高まってくることが明らかになり,昨年度までの試験ならびに1)で得られた,「原料投入により排気温度が著しく低下する」ことの解決の糸口が示された。
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