研究課題
豚レンサ球菌(S. suis)は、豚を自然宿主とする人獣共通感染症起因菌であり、菌体表層の莢膜の抗原性により30以上の血清型に型別されている。本菌の莢膜合成に関わる遺伝子はクラスター(cps gene cluster)を形成することが知られており、その交換により異なる血清型に変換しうることが強く示唆されている。したがって、血清型変換による既存のワクチンでは防御効果のない別のあるいは新たな血清型の株による事例の増加が懸念されている。しかし、未だ変換の現象は実証されておらず、その機序は全く分かっていない。そこで本研究では、本菌感染症における、今後の予防対策立案に役立つ知見を得ることを目的とし、S. suisの抗原性(血清型)変換が実際に起こる得ることをin vitroの実験により証明し、in vivoにおけるその発生機序を明らかにすることを目指した。まず、血清型変換の実証にあたり、S. suisが菌体外の遊離DNAを直接菌体内に取り込み、自身のゲノムに組み込むことができる自然形質転換能を有することに着目した。そして、自然形質転換を実験的に誘導することにより、血清型変換が起こることを明らかにした。さらに、莢膜の欠失により自然形質転換能が上昇することも明らかにした。動物体内では莢膜が欠失した株が特定の部位で高頻度に分離されることが知られており、莢膜欠失は抗原性変換が起こる確率を上げる可能性が示唆された。動物体内における血清型変換にはまだ成功していないが、莢膜合成関連遺伝子の変異により莢膜を欠失した株をマウス体内で継代することにより、莢膜の発現が復活した株が出現することを明らかにした。この実験系を用い、in vivoにおける血清型変換が起こりうるかを検討する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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