研究実績の概要 |
麦稈を副資材として搾乳牛ふん尿の堆肥化試験を4t規模で行い、2週に一度の頻度で切り返しを行った。それぞれの切り返し直前の堆肥表層におけるO2, NOおよびN2O濃度についてマイクロセンサーを用いて解析を行った。その結果、堆肥化初期ではいずれも低かったものの、中期以降は表層において顕著なNOおよびN2O濃度が観測された。特にN2O濃度は最大で645ppmにのぼり、堆肥表層がN2O生成源であることが確認された。これまでの結果から堆肥切り返し直後にN2O排出が起こることが示されていたが、今回得られた結果は切り返し間においても同様にN2O生成が活発に起こっていることを示している。 また、切り返し直前の堆肥表層あるいは中心部よりサンプリングを行い、シクロヘキシミドとクロラムフェニコールを用いたカビ、細菌の特異的阻害によるN2O生成への寄与について検討を行った。その結果、いずれのN2O生成もクロラムフェニコールによって大きく阻害される一方で、シクロヘキシミドの阻害効果は極めて限定的であった。このことから、切り返し直後の顕著なN2O排出におけるカビの貢献度は低いと考えられる。堆肥中心部にNO2を混合して得られるN2Oについて、これまでの研究と同様にSP値が20‰程度であることが確認されたが、このN2O排出もクロラムフェニコールによって阻害されることが示されたため、細菌によるN2O排出に新しい経路が存在する可能性が示唆された。 平成27年度の試験計画については、予定されていた堆肥化試験を始める段階で人事異動により研究を継続することが困難になったため、遂行できていない。
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