研究課題/領域番号 |
26870842
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
山村 崇 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物生産生理機能研究ユニット, 任期付研究員 (60582723)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GnRH / パルス状分泌 / キスペプチン / ニューロキニン / ターゲットトキシン |
研究実績の概要 |
本研究では、ヤギを実験動物として、ターゲットトキシンあるサポリン複合体を用いて弓状核キスペプチンニューロンより分泌される因子の機能を特異的に阻害し、GnRH分泌のパルス頻度の制御に関わるキスペプチンニューロンの生理機能を明らかにすることを目的とした。 弓状核キスペプチンニューロンにはニューロキニンB(NKB)およびダイノルフィンA(Dyn)が共局在していることが知られている。近年、NKBがGnRHパルスジェネレータの活動を誘起する重要な因子である可能性がされつつあるが、ニューロキニン受容体には3種あり、どの受容体が繁殖制御に重要な役割を有しているかは明らかにされていなかった。そこで、3種のニューロキニン受容体(NK1R、NK2RおよびNK3R)それぞれに特異的な作動薬を末梢投与した際の弓状核キスペプチンニューロンの活動および黄体形成ホルモン(LH)分泌におよぼす影響をヤギを用いて調べた。 その結果、NK3R作動薬は50 nmol量で弓状核キスペプチンニューロン神経活動とLH分泌を誘起した。一方、NK2R作動薬は1000 nmol量で効果があり、NK1R作動薬は1000 nmol量で顕著な効果は見られなかった。これらのことから、GnRHパルスジェネレータの活動制御にはNK3Rが優勢であり、NKBのメインターゲットであることが示唆された。 またこの結果をもとに、NK3Rをターゲットとしたサポリン複合体NK3-SAP(IT63: Advanced Targeting Systems社)を使用することで、GnRHパルス機構の制御に関与していると考えられるNKBの標的細胞を特異的に破壊できることが期待され、今年度は、雄ヤギを用いて、NK3-SAPの有効性および至適な投与条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NK3RがGnRHパルス機構において重要な役割を担っていることを明らかにでき、市販品であるNK3Rを標的としたサポリン複合体NK3-SAPを使用することで、キスペプチンニューロンより分泌されるNKBの標的細胞を的確に破壊できることが示唆された。また、若干の遅れはあるものの、NK3-SAPの有効性の確認および至適条件の検討を行った。 また、当初はダイノルフィン(Dyn)の標的細胞を破壊するためのサポリン複合体をAdvanced Targeting Systems(ATS)社へ依頼し自作する予定であり、この作成に時間を要するものと思われたが、ATS社からDynの受容体であるkappaオピオイド受容体を標的としたDyno-SAP(IT-68)が本課題開始後に市販されていることを知り、入手できたため、Dyno-SAPの有効性および至適条件の検討を予定よりも早く行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
得られたサポリン複合体の至適な投与条件をもとに、弓状核にNK3-SAPおよびDyno-SAPを投与し、GnRHパルスジェネレータの活動および血中LH濃度を投与前の状態と比較し、NKBおよびDynの標的細胞が破壊された際の影響を調べる。 方法としては、局所投与用カニューラと神経活動記録用電極を組み合わせ、投与部位近傍における神経活動変化を解析する。卵巣除去ヤギの弓状核に投与カニューラ/記録用電極を留置し、約1ヶ月の回復期間後、サポリン複合体投与前のGnRHパルスジェネレータ活動および血中LH濃度を観察する。その後、サポリン複合体を投与カニューラを介して投与し、投与後のGnRHパルスジェネレータ活動に及ぼす影響を数日おきにリアルタイムで解析し、同時にLH濃度の測定も行う。実験終了後には、灌流固定を行い弓状核を含む脳切片を作成し、NKBおよびDyn標的細胞への影響を免疫染色法またはin situ hybridization法にて確認する。また、薬剤投与による作為的な影響を排除するための対照実験として、非特異タンパクを結合させたBlank-SAP(IT-21, ATS社)を用いて、同様の実験を繰り返す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ダイノルフィンAの受容体を標的としたサポリン複合体を、当初はAdvanced Targeting Systems社へ依頼し自作する予定であったが、本課題開始後に市販され始め、試薬作成にかかる費用が大幅に削減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
GnRHパルスジェネレータ活動をより詳細に解析をするための簡便な機器の購入に次年度使用額をあて、当初予算はサポリン複合体、神経発火活動記録用器具、組織解析の試薬類、ガラス・プラスチック器具などの購入にあてる予定である。
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