前年度の12か月齢、15か月齢における解析に引き続き、18か月齢、24か月齢のAPP-KIマウスおよびFkbp5-Tg x APP-KIマウスを用いて解析を行った。解析にあたり、両者においてAβの蓄積に違いがないことをELISA法および免疫組織染色により確認した。タウのリン酸化および細胞内局在を指標としてタウ病理について解析した結果、18か月齢および24か月齢のFkbp5-Tg x APP-KIマウス大脳皮質ではそれぞれ同月齢のAPP-KIマウスに比べて総タウ量の増加が認められた。特に、24か月齢ではタウのリン酸化の亢進(Phos-tag SDS-PAGEにより確認)と海馬CA1およびCA3領域における軸索から細胞体への異所性局在(免疫組織染色により確認)が観察された。また、ガリアス銀染色により神経原線維変化(NFT)の形成について調べたが、NFTの形成は認められなかった。以上の結果から、APP-KIマウスにおけるFkbp5の過剰発現はタウの細胞内凝集体形成には影響しないが、タウのリン酸化亢進と神経細胞内での異所性局在を誘起することが明らかとなった。したがって、アルツハイマー病モデルマウスにおけるFkbp5の過剰発現は、タウ病理の促進に作用する可能性が高い。今後は、Fkbp5の過剰発現がどのようにタウ病理の促進に作用しうるのかについて明らかにするため、培養神経細胞などを用いたメカニズムの解析が必要であると考えられる。
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