平成27年度は創薬への適用を目指すには阻害活性値との関連がある構造を用いるのが望ましいと考え、Ki値等の実阻害活性と立体構造のデータベースであるBinding MOADをデータセットに用い、前年度と同様の記述子を用いモデルを構築した。水素結合及び疎水結合のスコア(0~1の範囲をとる)に応じて結合を分類しそれぞれについてモデルを構築した。適用例としてタンパク質リガンド間相互作用の評価関数としてLondon dG(MOE(Chemical Computing Group社)の実装を使用)とpKi、pKd値との相関係数で評価した。予測された結合に重要な残基を用いた場合と、全残基を含めた場合の相関係数で比較し、複数の系で性能向上がみられた。この中で例えばEC番号1.7.3.4及び2.4.2.30のターゲットでは水素結合と疎水結合の閾値をそれぞれ0.8、0.6以上とした予測モデルを適用した場合において、実験値との相関がみられるようになった。また本グループに含まれる実験構造において予測された残基のリガンド分子との水素結合、疎水結合への関与が確認できた。 研究期間全体として、受容体構造の環境及びプローブ分子のエネルギー値等を記述子とした予測モデルを構築した。PDBのデータセットを用いた場合では結合部位予測に有効であり、Binding MOADのデータセットを用いた検証では2種の結合種類の予測モデルを構築し、リガンド相互作用予測やドッキングスコアと実験値との相関向上への有効性を示した。SBDDにおいて新規に創薬研究を実施する際に重要視すべき残基を予測できる可能性のあるモデルを構築できた。 今回構築したモデルは汎用的にどのタンパク質に対しても適用可能であるが、今後はリガンド構造由来の記述子を加え、相互作用の特徴を増やす事でさらなる精度向上につながると考えている。
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