研究課題
腸管寄生蠕虫は、粘膜付近で特殊な免疫応答を誘導し、自らの寄生適応のため宿主免疫を抑制すると同時に、アレルギー反応など有害な免疫応答をも抑制することが示唆されている。しかし、腸管という場の複雑さも手伝い、この特徴的な免疫応答がどのように誘導されるかは分かってない。 本研究では小腸パイエル板に存在する特殊な腸管上皮細胞であるM細胞に着目し、粘膜を起点として感染する寄生虫感染に与えるM細胞 の影響を明らかにすることを目的として研究を行った。方法は、M細胞のマスター転写因子であるSpi-Bを欠損させたマウスに腸管寄生蠕虫であるHeligmosomoides polygyrus (Hp)を感染させることで解析を行った。 昨年度までに我々はSpi-B欠損マウスでは寄生虫感染に対し抵抗性を示すこと、そして骨髄キメラマウスを用いた解析により、その抵抗性は骨髄由来の細胞に依存しておりM細胞は関与していないことを明らかにした。更に、Spi-B欠損マウスでは肥満細胞が増加していることを見出した。そこで今年度は、肥満細胞を抗体で除去したSpi-B欠損マウスにHpを感染させた。その結果、これまで見られていた感染抵抗性が、感染感受性へと変化した。またこの時、肥満細胞から、寄生虫の排除に関わる二型自然免疫リンパ球を活性化するIL-33が産生されていることを見出した。これまでIL-33は腸管上皮細胞から産生されると考えられていたが、野生型マウス由来の肥満細胞からもIL-33が産生されていたことから、肥満細胞もILC2を活性化する細胞であることを世界で初めて明らかにした。
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