研究課題/領域番号 |
26870852
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
徳久 淳師 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (60455300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | XFEL / 単粒子構造解析 / コヒーレントイメージング / 類似性判定 / X線回折像 / CDI / X線自由電子レーザー |
研究実績の概要 |
XFEL光を用いた生体試料の単粒子構造解析が容易ではない最たる理由の1つは回折強度不足である。微弱な信号を最大限に有効活用するため、本研究では信号雑音比の悪い回折像の類似性を判定する方法の開発を進めている。今年度は開発中の類似性判定アルゴリズムに対して、パラメータサーベイによる最適化を行い、性能評価を実施した。 具体的には3つの大きさの異なる分子(リゾチーム、アルデヒド酸化還元酵素、70s-リボソーム)を選択し、各々4つのことなる入射X線強度密度に対して類似性判定シミュレーションを行った。予備実験から類似性を類似度として数値化する際に必要な回折像の同心円方向の積分幅を与えるパラメータは、判定結果に対して1度~5度の範囲でそれほど敏感ではないという結果を得た。そこで積分幅は1度に設定し、判定性能に対して重要であると予想した類似対判定の閾値と回折像の上限波数に対してパラメータサーベイを実施した。回折像対の図柄の類似性は波数空間における距離に対応する。シミュレーションでは1対の回折像の波数空間での距離を規定する2つの角度を直接求めることができ、この2つの角度を類似性の答えとして性能評価を行った。 類似度と答えの分布の関係を精査することで、類似判定解析が成立する条件を次の3つの条件で表現することに成功した。1.類似対の数を確保するための条件。2.非類似対に由来するバックグラウンドを排除する条件。3.回折強度の対称性に由来するシャドー相関線を排除する条件。これにより分子種毎、入射X線強度毎に、閾値と上限波数をパラメータとして類似判定解析が成立する領域を示すことに成功した。上記の条件は類似度の答えに対する分布関数をもとに与えられるが、近似的に分子種によらずユニバーサルに与えることも可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では3つの課題を遂行する予定にしている。今年度は計画当初予定した課題1に関して以下の結果を得ることに成功した。 大きさの異なる3つの分子に対してパラメータサーベイを実施した。解析が成立する条件を精査し、類似判定法の評価法を構築した。分子種毎、入射X線強度毎に閾値と上限波数をパラメータとして類似判定法の評価を行い、解析が成立する領域を示した。これに伴い、適したパラメータの範囲を明らかにすることに成功した。 一方で、解析が成立する各々の領域でどの程度の分解能が達成できるのかさらに調査を進める必要が出てきた。 以上から、平成26年度の研究実施計画をほぼ予定通り行うことができているが、課題1に関してさらなる調査も必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
課題1に関して今後は解析が成立する各々の領域で達成できる分解能を調べる予定にしている。 加えて以下の2つの課題を進める。 課題2.明らかに相関線が無いものを選択する方法について、相関線の有意度を事前判定の基準に用いた方法について検討する。バックグランド部分を大幅におさえることができる可能性がある。 課題3.中心部分の信号を除いた回折像を用いて類似性判定シミュレーションを行い、類似性判定における検出器不感領域の影響を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に伴い当初の予定よりもデータ保存領域を増大する必要があり、構成を再検討するためHPCサーバーの導入が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
スペックを少し下げたHPCサーバーの購入を進めると共に、データ保存領域を補うために低価格ネットワークストレージを導入したい。
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