生体単粒子X線構造解析において高分解能解析を実現するには量子雑音に埋もれたピクセル信号を有効信号として扱うことが必須となる。本研究では高分解能解析の実現の鍵となる、相関図を基礎としたX線回折像類似性判定法の自動化と高度化を進めた。 【課題1.回折像類似性判定法とその評価】さらなる高精度化・高感度化・高効率化を目指し、回折像類似性判定法にたいし予備解析と主解析からなるマルチステップアルゴリズムを開発した。予備解析では相関図において類似対であることを示す相関線を高速に同定することを目的とし、主解析でより詳細な類似度を算出する。数種の性能指標を検討した結果、縦軸を感度、横軸を偽陽性度からなるROC解析により分類性能を評価した。3種の生体高分子に対して様々な入射X線強度密度のもと性能評価を行なった。 【課題2.類似性判定時間を短縮するための事前判定法(予備解析)の開発】予備解析が対象とする低波数領域においては、相関線に加え、180°反対側にも高い相関値を持つシャドーが出現する。予備解析では相関線とシャドー両者の寄与を足し合わせた双対類似度を求めるようにアルゴリズムの最適化を行い相関線の出現を同定するための感度向上を目指した。70s-Ribosomeの場合、入射X線強度密度3x10**19[photons/pulse/mm**2]より大きな領域で予備解析を行うことが可能であることを示した。 【課題3.類似性判定法における検出器不感領域の影響】検出器面において入射X線の光路に位置するビームストップ領域は、検出器不感領域の代表例であり、ほぼ全ての検出器においてこの実データを得ることは難しい。上記解析においては、意図的に回折像中心部位からの信号を用いずに解析を行いその影響を引き続き調査した。マルチステップアルゴリズムにおいても類似性判定法におけるビームストップの影響は限定的であることを示した。
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