研究課題
申請者らは、大腸菌翻訳終結因子1遺伝子破壊株(RFzero株)を作製することに成功しており、本株を用いることによりタンパク質中の多数箇所に部位特異的に自在に非天然型アミノ酸を導入することが可能とした。本申請課題ではRFzero株を用いてハロゲン化チロシンを複数箇所に導入することによるタンパク質安定化法の開発を進行している。実際に、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)中に7個の3-ブロモチロシンまたは3-クロロチロシンを導入することにより顕著に耐熱化した変異体を作製した。また、X線結晶構造解析によりこれらの変異体の高分解能構造を得ることに成功した。さらにこれらの三次元構造を元に量子力学的計算を行い、ハロゲン原子がタンパク質中の空隙を埋めることによるvan der Waals相互作用の変化がタンパク質安定化の主因であることを明らかにした。そこでPDBに登録されている既存構造を用いてタンパク質中のチロシン残基meta位の空隙サイズを調べたところ、約四分の一が臭素原子または塩素原子の導入によりvan der Waals相互作用を形成させるのに適したサイズであることが判明した。このことから本法はGSTのみならず幅広い他のタンパク質にも応用可能であることが示唆された。実際にアゾレダクターゼ中の三箇所にブロモチロシンを導入することにより大幅に耐熱化させることにも成功している。本研究で示したハロゲン化チロシンによる安定化法は従来の進化工学的なタンパク質工学手法とも組み合わせ可能であり、酵素を初めとする産業上重要なタンパク質の改変における新たな可能性を提示するものである。
2: おおむね順調に進展している
一部研究対象となるタンパク質の見直しを行った以外は当該年度の研究実施計画において予定した研究の全てを順調に進行し完了した。研究目的のうち基礎となる部分及び応用展開の一部までを遂行し、研究期間内における目的達成向けた見通しを立てることに成功した。
前年度の成果に加えて更に応用展開にむけた研究を遂行する。特に産業上有用で安定化することにより大きなメリットが見込まれる酵素をメインターゲットとする。さらに酵素の安定化によりもたらされる高温での反応可能性についても検証を行っていきたい。
購入を予定していた物品の一部の購入を見合わせ、消耗品の一部について次年度以降の購入が適当であると判断したため。また、旅費についても予定金額を下回ったため。
翌年度分として予定していた消耗品の購入に加え、前年度に購入を見送った消耗品の購入を行う。広く応用展開に行うにあたり消耗品の購入額が大きくなる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 9762
10.1038/srep09762
巻: 5 ページ: 9699
10.1038/srep09699
EMBO Reports
巻: 16 ページ: 192-201
10.15252/embr.201439152