研究課題
本研究では睡眠覚醒ダイナミクスの設計原理を明らかにする2つの発見に至った。ひとつはNMDA受容体ファミリーの1つであるNr3a遺伝子と覚醒時間の関係性である。NMDA受容体は精神疾患との関連がわかっているが、睡眠との関連は明らかになっていなかった。そこで、7つのNMDA受容体遺伝子をそれぞれノックアウトした動物を作製し、非侵襲睡眠覚醒表現型解析システム(SSS; Snappy Sleep Stager)で睡眠表現型を評価したところNr3a遺伝子をノックアウトすると睡眠時間が減ることを突き止めた(Sunagawa et al., 2016, Cell Reports.)。本研究は睡眠恒常性への理解を深めたのにとどまらず、個体レベルでシステムバイオロジーの手法を実現した初めての研究といえる。さらに、包括的に睡眠恒常性を理解するために、コンピューターで睡眠モデルを作成し、睡眠恒常性に関連する構成要素を予測する手法をとった。これが2つ目の成果であるカルシウムイオンの動態を制御している経路が睡眠時間に影響を与えていることの発見につながった。カルシウムイオン関連経路が睡眠恒常性に重要であることが予測されたため、関連する全ての遺伝子を、それぞれノックアウトしたマウスを作製し、SSSで睡眠表現型を解析したところ、Cacna1g、Cacna1h(電位依存性カルシウムチャネル)、Kcnn2、Kcnn3(カルシウム依存性カリウムチャネル)、Camk2a、Camk2b(カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII)をノックアウトしたマウスの睡眠時間が、野生型のマウスと比べて顕著に短いことが、Atp2b3(カルシウムポンプ)をノックアウトしたマウスの睡眠時間が、野生型のマウスと比べて顕著に長いことがわかった(Tatsuki et al., 2016, Neuron)。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Neuron
巻: 90 ページ: 70-85
10.1016/j.neuron.2016.02.032
Cell Reports
巻: 14 ページ: 662-677
10.1016/j.celrep.2015.12.052
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160108_1/
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160318/