研究実績の概要 |
近年、意識の統合情報理論(Integrated Information Theory of Consciousness)が注目を集めている。この理論は情報理論の枠組みから脳内で情報がどれだけ統合されているかを測る量、統合情報量を定義し、統合情報量の大きさが意識レベルに対応するという仮説を提唱している。例えば、睡眠時などにおいて意識レベルが下がっている時には脳内の統合情報量が大きく減少すると予測している。本研究は、統合情報理論の理論的な発展と実験データを用いた検証を目的とする。最終的には統合情報量を基に、麻酔深度、睡眠深度のモニタリング、植物状態の患者の意識状態の判定などに適用可能な実用的「意識メーター」の開発を目指す。本年度は主に以下のことを行った。 (1) 統合情報量を情報幾何学を用いて解釈し直し、情報幾何学の観点から様々な指標を統一的に理解する枠組みを提案した。これによって、統合情報量と他の因果性の指標(transfer entropy, Granger causality, predictive informationなど)との関連がついた。この成果をまとめた論文はPNAS誌にて発表した(Oizumi et al., 2016, PNAS)。 (2) Granger causalityの解析などで用いられる方法を利用し、統合情報量を周波数領域に分解して計算する手法を提案した(Oizumi et al., in prep.)。 (3) 統合情報量を計算する際には、ネットワークを情報の損失が最小になるように分割する必要がある(最小情報分割)。劣モジュラ性を利用し、最小情報分割を正確にかつ高速に計算するアルゴリズムを開発した(Hidaka & Oizumi, in prep.)。
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