研究課題/領域番号 |
26870862
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
佐野 美沙子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 外来研究員 (00710815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 運動発達 / 道具使用 / 模倣 |
研究実績の概要 |
本年度の計画として、①これまで得られたデータについて分析を終了し考察を進める。特に動作性検査と社会性との相関についての解析を終了する、②英語論文を執筆し、国際誌に投稿する、③関連する学会で研究成果の発表を行う、を挙げて研究すこうしてきた。 ①について、動作性検査と社会性との相関の分析の結果、4~6歳の就学前児において、自閉傾向の強いものほど動作性検査の結果が低くなる傾向が見られた。模倣などを含む動作獲得を促すことで対人関係発達が促されるか、対人関係発達が進む中で動作獲得も進んでいくのかの相互関係は明らかとはなっていないが、ASD児の動作獲得を進めるような介入が社会性の発達を促す可能性が示唆された。また、全体を通して、4~6歳の低年齢のASD児の動作獲得について調査したところ、8歳以上のASD児を対象とした研究とは異なる見解が得られた。低年齢ASD児において対象物を介した運動実行(道具使用)には遅れはみられず、年齢があがるにつれ、TD児が獲得した運動表象を利用して道具を器用に使用していくことに対し、ASD児は運動表象の貯蔵や変換の問題から表象獲得が不十分となり、発達に遅れが生じるかもしれない。本研究では、ASD児の動作獲得については発達過程の異常というより発達の遅れが示唆された。 ②について、研究成果について英語論文を執筆し投稿したが不採択の結果となったため、レビュアーからのコメントを参考に再度考察を深め、加筆・修正を加えている。 ③については、神経心理学会、児童青年精神医学会など国内外の学会で、前年度までに得られた究成果について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を遂行するにあたり必要な検査者資格の取得について、海外機関のトレーナーとのやり取りが必要であり、想定したより時間を要したためやや遅れを生じた。また、成果発表について社会情勢を考慮してH28年度の学会参加のなかで中止したものがあったため、次年度改めて成果発表を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度、研究成果の最終発表として、国際学会での成果発表、英論文の投稿を計画している。学会発表について、H28年度は、神経心理学会や精神医学学会など基礎分野での発表を実施ししたため、H29年度は作業療法や特別支援教育関連など応用に焦点を当て実践分野での発表を予定している。論文投稿について、6月をめどに加筆・修正を加え再編し、投稿したい。道具使用動作に焦点を当てて考察を進めているが、認知課題との関連について一貫性が乏しい部分や、先行文献について最近のものをカバーしきれていない点があったため、その点についてより深める。また、結果の意義について支援の面からの考察を深めたい。年度内の採択を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行するにあたり必要な検査者資格の取得について、海外機関のトレーナーとのやり取りが必要であり、想定したより時間を要し、研究全体としても成果発表の論文投稿のための論文校正にも遅れが生じた。また、スリランカ開催のWorld Disability and Rehabilitation学会への参加を予定していたが、社会情勢を考慮して中止とした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由により、最終結果の学会発表と論文投稿を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとする。
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