本研究の目的は,視覚障害者の触覚特性を再検討し,凸点の単純形状パラメーターである高さと先端部の曲率半径(直径に相当)が弁別できる条件を明らかにすることであった.最終年度には,実験データの信頼性向上のために追実験を行った.研究期間全体を通じて得られた主要な知見は以下の通りである. 第一に,凸点の直径を変化させるだけでは,凸点を正確に触弁別することが難しいことが明らかとなった.そのため点字プリンターやグラフィカルソフトウェアでは,凸点の直径に加え,他の形状パラメーターも変化させて印刷する必要がある. 第二に,視覚障害者の加齢や触知経験の程度による触覚特性の変化に応じた,凸点の高さ弁別閾およびウェーバー比が詳細に明らかになった.当該データが推奨する凸点の推奨値は,これまで先行研究で推奨されていた数値とは大きく異なるものであった.当該データは,今後点字プリンターおよびグラフィカルソフトウェアを設計する上での参考値として利用できる. 第三に,実験計画の詳細を立案する過程で実施した歩行訓練士や視覚障害者当事者に対するヒアリング調査によって,視覚障害者に対する歩行訓練における触図の利活用の実態と触図に対するニーズ,そして点図の触読性に影響を及ぼす作成要因が明らかとなった. 第四に,本研究によって明らかとなった凸点の弁別に関する以上の知見に基づき,図中の要素が凸点の設計の違いによって描画し分けられた点図を作成し,その触知性を評価した.その結果,当該点図は高い精度で触知可能であったことから,本研究の知見の実用性が確認できた.
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