研究課題/領域番号 |
26870864
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研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
田島 英朗 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (70572907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PET / 脳PET / 頭部PET / 認知症 / アルツハイマー / ジオメトリ / 陽電子放射断層撮影 / 診断装置 |
研究実績の概要 |
あご紐付ヘルメット型PET装置の基礎検討を進めると同時に、世界に先駆けてヘルメット型PET装置の試作機開発を行った。具体的には、まず、基礎検討として、半球状に検出器を並べる際の、検出器ブロックサイズの感度への影響をシミューレーションによって検討した。その結果、遮光等のための不感領域を考慮すると、ブロックサイズを小さくすることで、ブロック間の隙間の数が増え、一つ一つの隙間は小さくできるものの、全体としては隙間が増え、感度が低下してしまうことが明らかになった。試作機開発では、放射線医学総合研究所の独自技術である4層DOI検出器を、半球部に47個、あご部に7個の計54個用いた。4層DOI検出器は、16×16×4配列のGSOZシンチレータ(3.0mm×3.0mm×7.5mm)と高感度型のマルチチャンネル光電子増倍管によって構成した。半球部は直径25cmの半径に接するように、直径の異なる3つの検出器リングと、頭頂をカバーする十字状に並べた5つの検出器によって構成し、あご部は、中心が半球部の中心よりも6cm下を中心とする半径12.6cmの弧に接するように並べて配置した。画像再構成法は、昨年度開発した手法に加えて、更に自由な検出器配置に対応した散乱補正法、及びシングル計数率を元にした偶発同時計数補正法の開発を行った。開発した装置と、画像再構成法を評価するために、頭部を模擬した3次元脳ファントムの測定を行った結果、良好な画像が得られることを確認した。また、あご部の検出器がある場合とない場合での画像化性能の比較をし、あご部に検出器を配置することで、特に視野の底面の端で画質の改善効果があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
提案ジオメトリの幾何学的な影響に加え、実際の検出器ブロックを想定し、様々な物理現象を考慮に入れたモンテカルロシミュレーションを行うことで、より具体的な効果の検証を進めた。単一サイズのブロック検出器を配置して装置を構成する際には、ブロックサイズを細かくして半球上を滑らかに覆うよりも、ブロック間の1ミリ以下程度の不感領域がさけられないため、5cm角程度のブロックを配置したほうが、全体としては不感領域が少なくなり、高感度になることがわかった。そして、約5cm角の4層DOI検出器を用いて世界初のヘルメット型試作機を開発し、また、測定データから画像化に必要な各種補正方法や画像再構成法を開発することで、提案ジオメトリが脳領域に対して高い感度と高いイメージング性能を有することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
単一種類の検出器で提案装置を構成する場合には、ある程度表面積の大きな検出器ブロックを用いた方が良いことがわかったが、頭頂部付近は隙間が大きくなり、改善の余地がある。そこで、2種類の大きさの検出器を組み合わせた場合の感度改善効果を検証する。その際、あご部への検出器追加の他、後頭部へ追加した場合等、追加検出器の配置方法についても検討を行う。また、半球の外側により多くシンチレータを配置できるように、層ごとに数が異なるDOI検出器の検討を行い、検出器試作をし、評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の試作機開発を優先させたため、ヘルメット型PETに特化した新しい検出器についての検討については次年度へ繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度により適した新しい光検出器が市場に投入されるため、それを購入し、新しい検出器開発を行う予定である。
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