研究課題/領域番号 |
26870865
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
網野 加苗 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (70630698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 聴取訓練 / 実用音声学 / 音響特徴量 / 聴能形成 / 母語話者 |
研究実績の概要 |
昨年度行った予備実験において,アクセント型の識別と純音の周波数の弁別閾値および山付けされた周波数の弁別の間に有意な正の相関が見られた.また,実用音声学者を対象とした聞き取り調査の結果,アクセント型の弁別または識別に不安を感じている人が多いことが分かった.それらの結果を受けて,本年度は,同じ参加者に対して複数回聴取実験を行った場合に,(1)音感の成績の変化,(2)アクセント型の識別成績の変化,(3)音感とアクセント型識別の間の関係,(4)実験間隔の影響,の4点を調査した. 年度内に複数回の実験に参加できることを条件に,日本語を母語とする健聴者を実験参加者として募集したところ,11名の応募があり,そのうち9名が4回,2名が2回実験に参加した.参加者は全員関東近郊に住む大学生である.初回の実験と2回目の間隔は1ヶ月程度とし,その後,各2ヶ月程度の間隔を開けて,3回目と4回目を実施した. 初回と2回目の純音の高さの弁別結果を比較したところ,9名中5名で成績が向上,3名で同じ,1名のみ成績が定価した.アクセント型の識別では,無意味語を用いた場合は7名で成績が向上(2名で低下),有意味語を用いた場合は8名で成績が向上(1名は低下)した.純音の高さの弁別とアクセント型の識別の関係を調べたところ,初回は0.90(無意味語と有意味語は同値,n=9),2回目は0.74(無意味語と有意味語は同値,n=9)であり,いずれにおいても有意な正の相関があることが分かった.実験の間隔については,2回目と3回目,3回目と4回目の間は2ヶ月開いており,純音の高さの弁別成績は2回目から3回目にかけて低下した人が多かったものの(7名中5名),アクセント識別の成績は特に有意味語ではさらに向上する人が多かった(7名中5名).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通りの実験を実施することができたが,若干人数が少なかったため.
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今後の研究の推進方策 |
他の音響特徴量(ガ行子音の知覚,摩擦音・破擦音の弁別など)と音感の関連について同様の実験を実施するとともに,音感の訓練を実施しない場合にアクセント識別の成績がどのように変化するかについても調査を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者が当初の計画よりも少なかったため.また,論文の執筆が年度内に完了せず,英文校閲・投稿料が未使用となったため.
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次年度使用額の使用計画 |
現在執筆中の論文の英文校閲料および投稿料として執行する.
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