研究課題/領域番号 |
26870865
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
網野 加苗 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (70630698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 聴取訓練 / 実用音声学 / 聴能形成 / 音感 / アクセント / 母語話者 |
研究実績の概要 |
本研究では,実務において日本語音声を扱う実用音声学者(日本語教師,アナウンサー,言語聴覚士,音声鑑定人など)のうち日本語を母語とする者を対象とした,日本語音響特徴の聴取訓練法の開発を目的としている.特に音響特徴の聴取と音感の関係に注目し,音感訓練を行うことで音響特徴の聴取成績が向上するか,調査している. 本年度は,延べ75名を対象に,日本語高低アクセントに関する聴取実験(聴取訓練)を行った.音感訓練では音の高さ,大きさ,響きの課題を行い,アクセント訓練では,京阪式および東京式のアクセントパターンについて,無意味語・有意味語を用いて,弁別・識別課題をそれぞれ実施した.実験参加者を3つの群に分けて,1~2ヶ月間隔で2~4回実験を行い,音感訓練の有無およびアクセント訓練と音感訓練の実施順の効果を検証した. 初回実験時,アクセント聴取と音感の成績の群間差はなく,どの群においてもアクセント聴取と音感(音の高さの知覚)の間に有意な正の相関が見られた.初回と2回目の成績変化を調べたところ,どの群においても成績が向上していたが,群間差はなく,音感訓練の有無,音感・アクセント訓練の実施順ともに有意な効果は見られないという結果になった. 課題ごとの成績を見ると,無意味語より有意味語,弁別課題よりも識別課題で全体的な正答率が低く,参加者間の差が大きいことが分かった.アクセントパターンの識別課題では,成績が上位群(8割程度)と下位群(4割程度)に大きく分かれる結果となり,アクセント聴取が困難な母語話者の存在を改めて確認することができた.特に,アクセント型のうち中高型と尾高型の区別や,京阪式の平板型(高起,低起ともに)が困難であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクセント知覚と音感の関連について,予定通り実験を実施した.結果を統計的に検討するにあたり必要な参加者数を確保することができた.得られた実験結果について,経過を学会で報告した.
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今後の研究の推進方策 |
実験結果を詳細に検討し,学会で報告する.実用音声学だけでなく,音声知覚の側面からも検討を行い,論文を執筆する.
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次年度使用額が生じた理由 |
十分な人数の実験参加者を確保するために年度末まで実験を行ったために,学会等における実験結果の報告を一部次年度に持ち越したため.また,掲載待ちの論文の掲載料請求時期が次年度になることを見越して,その分を残したため.
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