研究課題/領域番号 |
26870871
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
金 勲 国立保健医療科学院, その他部局等, 研究員 (00454033)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アレルギー / エンドトキシン / ハウスダスト / 住宅 / 室内環境 |
研究実績の概要 |
本研究では、居住者が室内で常に接しているハウスダストに含まれる「エンドトキシンの濃度と居住者のアレルギー有症率」との関連性を調べる。以下の研究から構成される。(1)都市住宅におけるハウスダスト中エンドトキシン濃度の実態調査(2)エンドトキシン濃度と居住者アレルギー有症率との関係(3)アレルギーに対するその他室内環境因子(アンケート調査)の寄与度分析(4)室内浮遊粒子状物質(PM2.5、PM10)濃度の実態調査 調査のための、分析機器及び試薬準備、事前調査、分析方法の確立、倫理審査、設問票の作成が終了し、対象者の手配も順調に進んでいる。 1年目はダスト中エンドトキシン濃度を測定するための前処理条件、分析条件、保管時間と濃度変化に関する試験を行い、次のような試験方法を確立した。濃度分析はToxinometerを用い、ライセート試薬と反応させたエンドトキシンのゲル化に伴う濁度変化をカイネティック比濁法で測定して作成検量線に基づいて定量化した。結果、エンドトキシン濃度は数千EU/mL(=EU/g)水準であり、分析に必要な適正希釈倍率は25,000倍であった。試料の常温保管では試料中微生物の急激な増殖によるエンドトキシン濃度の急増が確認された。前処理後の試料は4℃冷蔵保管であれば24時間まで濃度変化は現れなかったが、不確実要素を減らすため6時間以内に分析する。 アンケートの作成が終了し、倫理審査承認を得ている。アンケート票は2種類、家庭全体に関する設問及びアレルギー症を持っている家族構成員用を作成した。居住形態、周辺環境、住宅構造、築年数など住居に関する一般事項に加え、喫煙・飲酒、ペット有無、掃除状況、換気、冷暖房方式、ダンプネスなどの室内環境因子及びアレルギーや慢性疾患など健康状態についての設問となっている。 2年目は試料収集目標数を70~80件とし、総数100件を目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査のための、文献調査、分析機器及び試薬準備、事前調査及び予備実験、分析方法の確立、倫理審査、アンケート票の作成が終了している。また、ダスト中エンドトキシン濃度を測定するための前処理条件、分析条件、保管時間と濃度変化に関する試験を行い分析方法を確立し、国内住宅におけるハウスダスト中エンドトキシン濃度の水準を把握し、適切な既約倍率を確定した。 調査対象者は首都圏在住の建築専門の大学生を主として手配も順調に進んでいる。本年度の試料収集目標数は70~80件とし、総数100件以上を目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
調査のための、文献調査、分析機器及び試薬準備、予備実験、分析方法の確立、倫理審査、設問票の作成が終了している。 調査対象者は首都圏在住の建築専門の大学生を主として手配も順調に進んでいる。本年度の試料収集目標数は70~80件とし、総数100件以上を目標とする。 今後は、国内住宅におけるエンドトキシン濃度の実態を把握するとともに、調査結果は統計解析ソフトSPSSを用いて多変量解析を行い、エンドトキシン濃度及び他室内環境因子のアレルギー症に対する寄与度を調べる。多変量解析に投入する独立変数の選定にあたっては、アレルギー症の有無と相関関係が高い変数を絞る。なお、アレルギーの主要症状(皮膚、鼻、目の症状など)と相関関係が高い独立変数も同様の手法で探索を試みる。 室内浮遊粒子状物質(PM2.5、PM10)濃度の実態調査は希望者のみを対象としているため標本数が少なくなることが予想されるが、室内における実態把握の面で重要なデータになると考えている。可能であれば、1日間以上の連続測定による在室者行動と濃度変化の関係を調べる。 研究結果は、今年度の室内環境学会大会及び次年度の日本建築学会などで発表するとともに、まとまった成果は本年度中に国内論文誌や国際学会誌に査読論文として発表する。更に、科学院で毎年行っている保健所や地方自治体職員を対象とした生活衛生健康関連研修で紹介する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上した研究費の主な支出は、実験用試薬・実験器具、旅費、研究協力者への謝金である。ライセート試薬と薬品、ガラス実験器具、ピペットなどの消耗品は、競争入札により予想単価より安く購入できた。また、アンケート及び試料の郵送収集(年間50件)にかかる費用を計上していたが、初年度は事前調査の性格もあり、直接配布及び直接改修が殆どであった。 旅費として現場測定、国内学会、海外学会を予定していたが、現場測定は2年目に行うことと変更していること、研究初年度は発表機会が少なかったことから旅費の支出が少なかった。また、アンケートデータの入力・処理、実測・実験補助のためアルバイト2名分を計上していたが、初年度はアンケート回収数が少なく研究代表者が作業した。人件費に関しては、本格的な回収が予定されている2年目に集中的に支出する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
分析装置及び実測機器は全て揃っているため備品や大きな機材の購入予定はない。研究費の主な支出はライセート試薬と薬品、ガラス実験器具、ピペットなどの消耗品であり、2年目の研究では分析試料数が増えるためこちらの使用額が増加する。加えて、マイクロピペットやバイアルチューブミキサーなどの小型実験機器を新しくする予定である。 アンケート及び試料の郵送収集(70~80件)にかかる費用、研究対象者への謝金(70~80名分)、アンケートデータの入力・整理・実験補助のため人件費としては2名分(各200時間程度)を予定している。 旅費としては現場測定、国内学会を予定している。
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