研究課題
現在、原因不明として報告される食中毒の推定原因細菌については、既知の病原因子が検出されない、または検出された細菌による症状が当該食中毒症状と異なる等の理由から病原細菌と特定することが困難となっている。一部の原因不明食中毒においては、既知の病原体は未検出であったが、メタゲノム解析により原因細菌が推測されている。本研究においては、これまで分離同定法により食中毒事例の原因細菌として推定された大腸菌ならびにメタゲノム解析により食中毒事例の原因細菌として推定し分離された大腸菌について細胞毒性および細胞付着・侵入性を評価した。分離同定法で推定された大腸菌についてはゲノム情報を取得した。これら推定病原大腸菌について、既知の病原性大腸菌(EHEC、EPEC、EAEC、UPEC、ExPEC)ならびに推定病原大腸菌間における近縁関係を明らかにするため、既知の病原性大腸菌のゲノム情報と共にSNP解析を行い、得られたSNPs情報を元にUPGMA法によるクラスター解析を行った。また、ORF予測およびBLAST解析を実施し、新規の推定病原大腸菌間の比較解析を実施した。原因不明食中毒の推定原因細菌について、病原性の評価ならびにゲノムレベルにおけるクラスター解析によって各推定原因大腸菌の新規病原細菌としての位置づけを行うことができた。解析を実施した4種類の新規病原細菌はいずれも食中毒の推定原因物質となった可能性が高かったが、培養細胞レベルにおける感染様式に類似性は見られず、ゲノム解析によって近縁関係にある可能性が低いことが示唆された。これらの知見は、新規病原細菌の感染メカニズムの解明および検査法・予防対策のための科学的基盤の構築に寄与することが期待される。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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