研究課題
1. 進行例での確認 国立がん研究センター東病院、肺癌データベース(肺癌全体 約14000例)の中から、生検により大細胞神経内分泌肺癌(LCNEC)と診断された症例を抽出したところ、13例の進行例が抽出された。これら13例につき、年齢、性別、喫煙指数、病期、腫瘍マーカー、再発の有無、生命予後等の臨床因子を抽出した。更にHE標本を再評価して、形態学的にLCNECの特徴を有していることも確認した。このLCNEC進行例13例において、ホルマリン固定のパラフィン包埋病理組織標本のブロックからゲノムDNAを抽出し、244個の候補遺伝子によるターゲットシークエンスを実施した。またシークエンスのリード数を基に、遺伝子増幅の解析を行った。2. 機能解析 1.で対象とした13例のLCNEC進行例の遺伝子解析結果と、平成26年度に解析した65例の切除例の解析結果を統合し、日本人LCNEC遺伝子変化の全体像(全78例)を把握した。統合解析の結果、LCNECでは小細胞肺癌と同様に、がん抑制遺伝子:TP53、RB1遺伝子に高頻度に変異を認めた。一方、PI3K/AKT/mTOR経路を構成する遺伝子群に変化を認めたのは、14例(18%)であった。またKRAS、EGFR、ERBB2遺伝子に、それぞれ3例(4%)、1例(1%)、1例(1%)の既知の活性型変異を認めた。3. 研究計画の達成度 平成27年度までに、LCNEC切除例及び進行例の両者で合計78例の標的遺伝子解析を行い、日本人LCNEC遺伝子変化の全体像を把握した。またPI3K/AKT/mTOR経路に加え、EGFR遺伝子やERBB2遺伝子にも活性型変異を認め、いずれも有望な治療標的の候補と考えられた。これらにより、当初予定していた研究目的が2年間でほぼ全て達成されたため、研究は順調に進展した。
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