研究課題
ルミナルタイプの乳がん細胞株においてノンコーディングRNAの1つであるmicroRNA-27b(miR-27b)の発現低下あるいは欠失によりドセタキセル耐性が誘導されることをこれまでに見出している。平成26年度は、ルミナルタイプのヒト乳がん細胞株2種類(MCF7とZR75-1細胞)を用いて、miR-27bの発現低下によりドセタキセル耐性が誘導される機序を検討した。その結果、miR-27bの発現低下により薬剤排出能が著しく亢進しているside-populationが形成され、ドセタキセル耐性が誘導されることを明らかにした。side-population は高い造腫瘍性を示す細胞集団であることがすでに報告されていることから、miR-27bを過剰発現あるいは抑制したMCF7細胞株を持ちいて動物実験を行い、それら細胞株の造腫瘍性を評価した。その結果、miR-27bの発現低下に伴い腫瘍形成能が著しく亢進することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で述べた通り、平成25年度の研究計画に沿って研究は推移している。miR-27bの発現低下によりドセタキセル耐性と造腫瘍性が誘導されたことから、がん幹細胞形質の獲得にmiR-27bが重要な役割を果たすことが示された。また、これらの結果から、miR-27bの標的分子群を同定することが重要な課題になりうると考えられる。
平成26年度は、乳がん細胞株においてmiR-27bの発現低下に伴いside-populationが形成され、その結果、ドセタキセル耐性だけでなく造腫瘍性の亢進も誘導されることを明らかとした。上記の結果は、miR-27bの発現低下によりがん幹細胞集団が形成されことを示唆している。また、miR-27bの発現を制御することが、難治性乳がんに対する新規治療法の開発にもつながると考えられる。平成27年度は、miR-27bを過剰発現あるいはノックダウンした細胞株を用いて網羅的な発現解析を行い、その標的分子群を同定する。また、併せて、自身が所属しているがん研究センターの臨床検体(約100症例)を用いて、標的分子群の発現と悪性度に相関が見られるかを検討する。
平成26年度に予定していたmRNAアレイを用いた遺伝子発現解析をH27年に持ち越したため、113,023円分の持ち越しが生じた。
H26年度分の113,023円とH27年度分の研究費を合わせて、遺伝子発現解析を行い、miR-27bの標的分子を同定する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://mcm.ncc.go.jp