研究課題
1. 最終年度に実施した研究成果:前年度までに、ルミナルタイプの乳がん細胞においてノンコーディングRNAの1つであるmicroRNA-27b(miR-27b)の発現低下あるいは欠失によりドセタキセル耐性が誘導されることを明らかにしている。また、その機序として薬剤排出能が著しく亢進している細胞集団であるside-populationが形成されることも報告した。最終年度は、ヒト乳がんの臨床検体とその細胞株(MCF7とZR75-1細胞)を用いて、side-populationが形成される機序を検討した。microRNAの主な機能としてその標的となる遺伝子の発現を抑制することから、miR-27bの発現を抑制あるいは亢進させた細胞株を作製し、miR-27bと発現が逆相関する分子の探索をマイクロアレイ解析により行った。その結果、標的分子としてENPP1(Ectonucleotide Pyrophosphatase1)の同定に成功した。乳がん細胞株においてENPP1を過剰発現させることで、薬剤の排出を行うABCトランスポーターであるABCG2が細胞表面に提示され、side-populationの形成が誘導されることを明らかにした。また、臨床検体においてENPP1の発現量を定量PCRにより検討した結果、miR-27bの発現低下が確認された症例において有意にENPP1の発現が亢進していることも確認された。2. 研究期間全体を通じて実施した研究の成果がん幹細胞形質である薬剤耐性と腫瘍形成能をside-populationも示すことから、本成果は、miR-27bのmimic(模倣核酸)やENPP1に対する核酸医薬の開発が難治性乳がんに対する新たな創薬につながることを示唆している。また、期間内に上記の成果は論文として報告した(Takahashi et al., Nat commun, 2015)。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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