研究課題
テロメアが短くなるほど細胞の分裂活性が抑制されていくことから、テロメア長は細胞の分裂可能回数を規定していると言われている。前年度までの解析の結果、第二世代抗精神病薬が海馬においてテロメア伸長を促す可能性が示唆されたことから、海馬の神経新生におけるテロメア伸長作用について組織学的に検討を行った。前年と同様に、統合失調症のモデルマウスとして3週齢から8週齢まで社会的隔離飼育ストレスを負荷し、第二世代抗精神病薬としてリスペリドンを6週齢から8週齢まで投与した群、またリスペリドンとテロメラーゼ阻害剤である3'-アジド-2',3'-ジデオキシチミジン(AZT)を併用投与した群を作成した。8週齢時に、5-bromo-2'-deoxyuridine(BrdU, 75mg/kg)を2時間おきに3回腹腔投与し、最終投与24時間後、脳を取り出し、免疫組織化学染色を行った。その結果、社会的隔離飼育ストレスにより、海馬での神経新生は有意に減少しており、その減少はリスペリドンの投与により改善することが明らかとなった。また、この時の海馬におけるテロメア長は短縮しており、BDNFの減少、テロメラーゼ(TERT)発現量の減少も併せて検出され、これらもリスペリドンにより改善することが示された。しかしながら、テロメア伸長酵素テロメラーゼの阻害剤AZTの併用投与された群においては、神経新生の減少およびテロメア長短縮に対するリスペリドンの効果が失われた。これらの結果は、テロメア短縮海馬における神経新生の減少に関連していることを示唆する結果であり、実際に統合失調症患者において海馬での神経新生が有意に減少しているという既存の臨床学的な報告とも一致する結果である。
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