研究課題
LPCAT3遺伝子欠損マウスでは、生後1日目の小腸において大量の脂質(中性脂肪:トリグリセリド)が蓄積している事を発見した。また血液学検査の結果より、血中トリグリセリド濃度だけでなく血糖値の低下も見られた事から、LPCAT3遺伝子欠損マウスが小腸機能不全を起こしている可能性が示唆された。これがLPCAT3遺伝子欠損マウスの新生児致死(生後一週間以内に全てのマウスが死亡する)の原因の1つと考えられた。さらに小腸におけるトリグリセリド蓄積のメカニズムを明らかにするため、トリグリセリドの輸送タンパク質であるMTP(Microsomal Triglyceride transfer Protein)に着目して解析を行なった。LPCAT3遺伝子欠損マウスのMTP発現量および活性自体に野生型マウスとの違いは見られなかった。そこでLPCAT3が合成するアラキドン酸含有リン脂質がMTP活性に影響を及ぼすのではないかと考え実験を行なった。数種類の脂肪酸含有リン脂質を使ってトリグリセリド含有リポーソームを作製し、リン脂質中の脂肪酸組成がMTP活性に関係するのかを調べた。結果、アラキドン酸含有リン脂質はオレイン酸やリノール酸含有リン脂質と比べMTP活性を上昇させる事が分かった。このことからLPCAT3遺伝子欠損マウスではアラキドン酸含有リン脂質が減少しているため、MTPによる効率的なトリグリセリド輸送が低下しており、小腸でのトリグリセリド蓄積が起こっていると予想された。上記の結果をまとめて、昨年度論文を発表した(Elife, 2015)。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Elife
巻: - ページ: -
10.7554/eLife.06328
J. Cell Biochem
巻: 116 ページ: 2840-2848
10.1002/jcb.25230