メタボリック症候群の肝での表現型である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、飽食の時代において肥満や糖尿病とともに患者数の急増を認め、実地臨床では進行型NASH由来の肝硬変、肝細胞癌が大きな問題となっている。潜在的に数千万人の罹患者が推定される脂肪肝患者の中から、予後不良な進行型NASHを、できるだけ早期の段階で効率的に拾い上げるための新規低侵襲的診断法の開発を目的とした。具体的には、事前の探索的パイロット研究によって作成した「NASH発症のメカニズムに注目した診断法としての脂肪酸画像を用いた回帰モデル」を検証し、その診断モデルの有用性を評価し、臨床での実用化を目指す。また診断法の開発に付随して血清や遺伝子解析を通じて病態解明の一助とすることも目指している。 事前の探索的パイロット研究の段階で、単純性脂肪肝(SS)、早期NASH(eNASH)、進行NASH(aNASH)患者各々の肝では、標識された側鎖脂肪酸であるBMIPPの薬物動態が異なることが確認できた。肝生検を実施した14症例(SS4例、eNASH6例、aNASH4例)の症例毎の脂肪酸シンチグラフィーのデータに関して、複数の指数関数と変数によるカーブフィッティングをおこない、非NASH/NASHを従属変数、フィッティング関数における3つの変数を説明変数とするロジスティック回帰分析からNASH診断の回帰モデルを作成したところ、感度100%、特異度75%、陽性的中率91%、陰性的中率100%、正診率93%という良好な成績を得た。 本モデルの有効性の検証のため、その後は前向きに13症例の肝生検を実施した脂肪肝(SS+NASH)患者を登録し、上記モデルでの診断能を評価した。 また同時に機序解明として、血清や肝の遺伝子解析も実施し、既存のバイオマーカーとの比較、肝内脂質代謝に関わる因子の遺伝子発現レベルの群間比較をおこなった。 今後はこれらの成果を国際雑誌へ報告することを責務と考えている。
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